求めたフィジカル強化で急成長中。恩師・小菊監督の言葉も胸に、石渡ネルソンがU-20日本代表といわきで掴む飛躍

いわきグローイングストーリー第8回
Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。
第8回では、今季からいわきFCに加入すると徐々に頭角を現し、来月6月にフランス遠征を実施するU-20日本代表メンバーにも選出された、石渡ネルソンが成長していく軌跡について描く。
ユース時代に不足した試合経験を取り戻す最中
ドレッドヘアにしたのは、自身のモチベーションを高めるためだ。
ナイジェリア人の父と日本人の母のもとに生まれた石渡ネルソンは、5月10日に20歳を迎えた。背番号7にふさわしい存在感を示し、ボールを持てばゴールに近づくプレーで攻撃陣を牽引。試合を重ねるごとに主力選手へと成長している。
シーズン開幕早々にケガで出遅れたが、第4節・徳島戦で途中出場を果たすと、YBCルヴァンカップ1回戦のRB大宮アルディージャ戦で2得点を記録。いわきは当時、流れの中からの得点が不足していたが、パスワークで崩し、サイドアタックから得点につなげた。そして第17節・ベガルタ仙台戦まで、主にボランチの一角としてプレー。出場時間は840分に達し、早くもキャリアハイを更新した。後半戦も同じペースで出場を続ければ、2000分近いプレー時間が見込める。
いわきに育成型期限付き移籍で加入した選手は、共通して出場機会が限られていた背景を持つ。石渡もその一人だ。プロ4年目の石渡は、昨年セレッソ大阪から武者修行に出て愛媛に在籍。初めての移籍やプロの壁に直面し、12試合に出場して1得点に終わった。
愛媛での経験を振り返り、「1年間プレーして、フィジカルの強化が必要だと痛感した」と語り、将来を考えていたタイミングでいわきからオファーが届いた。いわきへの移籍は自分を変えるチャンスと捉え、移籍前には昨年いわきでプレーした大迫塁(現SC相模原)から「練習はキツいぞ」との助言を受けたという。
石渡が言う「フィジカル」とは、単なる体格だけでなく体力面も含む。いわきに来て変化を実感している。
「以前は80分を超えるとバテていたが、いわきに来て走れるようになり、アップダウンの激しい展開でも対応できるようになった。カウンターを受けて長い距離を戻る場面でも、以前ならキツいと感じていたが、今はパワーを出して戻れる感覚がある。スプリントとストレングスがサッカーに直結している」
プレーの強度にも順応し、「攻守に走れるダイナミックなプレーヤー」を目指す片鱗が見えてきた。
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Profile
柿崎 優成
1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。