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コンテ・ナポリの不思議なパッチワーク。左右非対称で歪だけどバランスが取れている秘密

2025.05.28

新・戦術リストランテ VOL.68

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第68回は、インテルとの一騎打ちを制してスクデットを獲得したコンテ・ナポリの戦術分析。「左右非対称」「流動性と固定の独特なバランス」「複雑な攻→守の逆回し」……アンバランスだけどバランスがいい、不思議なパッチワークを解説してみたい。

年間MVPのスコットランド人MFマクトミネイの覚醒

 ナポリのセリエA優勝が最終節で決まりました。2位インテルとの差はわずか1ポイント。カリアリに2-0で勝利して、2年ぶり4回目の戴冠です。

 ナポリは59得点で、2位インテルの79得点、3位アタランタの78得点と比べるとかなり少ない。一方で失点27はリーグ最少です。守備的なチームではありませんが堅実さが際立ちます。

 今季加入したスコットランド人、マクトミネイが大活躍、12ゴール6アシストでリーグ年間MVPに選出されています。マンチェスター・ユナイテッドのアカデミー出身、ナポリではユナイテッド時代よりも攻撃的なポジションでプレーしています。ちなみにボランチのギルモアもスコットランド人。スコットランドと何かコネクションがあるのか、単に相性がいいのかはわかりませんが、イタリアではけっこう珍しいケースではないでしょうか。

 優勝を決めたカリアリ戦の先制点は42分、マクトミネイの華麗なジャンピングボレーでした。51分にはルカクがゲットして2-0。ロングボールを受けてDF2人を制してのゴールはいかにもルカクらしい力感溢れる一撃でした。

「左右非対称」+「流動性と固定の独特なバランス」

 コンテ監督がセリエAを制したのは5回目になります。ユベントスで3回、インテルで1回、そして今回のナポリ。チェルシーではプレミアリーグも獲っていますから、優勝請負人の貫禄ですね。

 コンテ監督といえば3バックの堅守速攻というイメージですが、今季のナポリは4バックです。開幕当初は3バックでしたが早々に変えています。攻撃の中心だったクバラツヘリアが冬のマーケットでパリ・サンジェルマンへ移籍して、なかなか大変なシーズンだったと思いますが、何とかやり繰りして優勝に辿り着きました。

 ナポリの特徴としてモビリティ(機動力)が挙げられると思います。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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