クリスタルパレスのFAカップ戴冠と、ペップ・シティ黄金期=「デ・ブルイネの時代」の終わり

新・戦術リストランテ VOL.67
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第67回は、鎌田大地を擁するクリスタルパレスが制したFAカップ決勝で感じたペップ・シティ黄金期=「デ・ブルイネの時代」の終わりについて。
廃藩置県の年に始まった伝統のカップ戦
FAカップ決勝、クリスタルパレスがマンチェスター・シティを破り初優勝。鎌田大地は決勝でプレーして勝った唯一の日本人選手ということになります。クリスタルパレスとしては初のタイトルでした。
FAカップが創設されたのは1871年、最初の優勝はワンダラーズです。1871年といえば、日本では廃藩置県が行われた年。欧州では普仏戦争が勃発。ラグビーフットボール協会が設立され、米国プロ野球リーグが開始されています。岩倉使節団が派遣されたのもこの年だそうです。
何だか古すぎてよくわかりません。大久保利通や西郷隆盛が生きていた時代からやっていたんですね。
試合は16分にクリスタルパレスがエゼのゴールで先制。58分にもロングスローからこぼれ球をムニョスが2度押し込んでネットを揺らしますが、最初のシュートがサールに当たっていてオフサイド。シティは78%のボール保持率で攻めまくるものの、ノーゴールに終わりました。36分にPKで同点にするチャンスがありましたが、マルムシュのシュートをGKヘンダーソンが見事にセーブしております。
クリスタルパレス、本当によく守りました。
最終的にはシティの保持率は78%でしたが、試合中はほぼ80%超え。ワンサイドゲームどころかフィールドの3分の1しか使っていない状態。それでもクリスタルパレスは7本のシュートを放ちましたが、枠内は得点になったシュートの他は1本だけです。シティは22本浴びせていますが枠内は5本。分厚い守備を前になかなか決定機を作れませんでした。
[3-4-3]で攻撃に“全フリ”したペップの狙い
先発メンバーを見たとき「おや?」と思ったのは、シティのボランチがデ・ブルイネとベルナルド・シルバのコンビだったことです。コバチッチ不在もあったかもしれませんが、ちょっと意外な人選に思いました。
しかし、試合が始まってみると「そういうことか」と。シティのフォーメーションは[4-2-3-1]ではなく[3-4-3]でした。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。