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大島僚太に学ぶ「プレーキャンセル」の質、J1で感じる「プレースピード」の差。大関友翔が川崎F復帰で得た成長の糧

2025.04.25

フロンターレ最前線#15

「どんな形でもタイトルを獲ることで、その時の空気感を選手に味わってほしい。次の世代にも伝えていってほしいと思っています」――過渡期を迎えながらも鬼木達前監督の下で粘り強く戦い、そのバトンを長谷部茂利監督に引き継いで再び優勝争いの常連を目指す川崎フロンターレ。その“最前線”に立つ青と黒の戦士たちの物語を、2009年から取材する番記者のいしかわごう氏が紡いでいく。

第15回では福島ユナイテッドでの武者修行から復帰を果たし、初先発で初得点も挙げたU-20日本代表MF大関友翔が得ている収穫と課題について。大島僚太に学ぶ「プレーキャンセル」の質、J1で感じる「プレースピード」の差とは?

 3月16日、JFE晴れの国スタジアムで行われたJ1第6節ファジアーノ岡山対川崎フロンターレ。スコアレスで進んでいた62分、山本悠樹と交代してピッチに入ったのは大関友翔だった。自身にとって、これがJ1デビューの瞬間となった。

 昨季はJ3の福島ユナイテッドFCへの育成型期限付き移籍で武者修行。主力としてシーズンを過ごし、リーグ戦32試合8ゴール6アシストを記録した。J3のベストイレブンにも選出され、今年、所属元である川崎Fに復帰を果たしていた。

 2月はU-20日本代表の活動でチームを離れる期間が長く、中盤のレギュラー争いに割って入ることはできていなかったが、3月になり訪れた出番。ただ入った直後こそ活力を与えていたものの、スリッピーなピッチに戸惑い、時間とともに存在感は希薄に。決定的な仕事をすることはできずに、スコアを動かせぬままタイムアップの笛を聞くこととなった。

 自分の出来には納得していなかったのだろう。試合後は険しい表情で語った。

 「悔しいJ1デビュー戦になったという感想です。点の欲しかった状況でトップ下に入ったので、ゴール前に関わること、シュートもそうだけど、得点で決定的な仕事をすることでした。単純なミスが多かった。自分自身の手応えというか、悔しい方が強いです」

 2月6日に20歳を迎えたばかりの若者らしく、悔しさを素直に滲ませている。試合中はボールコントロールが乱れて、見せ場を作ることも少なかった。84分にはベンチへと下がった河原創の穴を埋めるべくポジションを1列下げたが、やろうとしたことを表現できずに試合が終わった印象だ。

 試合後の長谷部茂利監督は「少し気負いというか、やはり彼もこのピッチに少し悩まされていたのかなと。彼らしくないミスも少しあった」と慮ったが、本人はそこに言い訳をしなかった。

 「ピッチの問題にしたら簡単なので。自分自身、J1でフロンターレでスタメンの座をつかむためには、要らないミスだったかなと思います」

 収穫もあった。難しい場面で出場時間を得られたこと、そしてトップ下とボランチの両方でプレーできると示したことだ。

 「いろんなポジションができるアピールはできた。やっていて楽しいし、そこで信頼してもらえるように。距離感も良くなると思うので」

 ミックスゾーンでの取材対応を終えると、その足でU-20日本代表のスペイン遠征に向かっていった。

「巧いに尽きる」大島から学びながら初先発で初得点

 その2週間後の3月29日。味の素スタジアムで開催された第7節・FC東京(○0-3)との多摩川クラシコ。近場のアウェイゲームということもあり、チームスタッフとメンバー入りしていない若手数人が記者席に座っている。スペイン遠征から帰ってきたばかりの大関も、現地で観戦していた。

 彼の主戦場であるボランチは、大島僚太が復帰し、山本、河原、橘田健人の4人がひしめく激戦区となっていた。試合翌日の取材に応じた大関は、「アピールする時間をもっと増やさないといけない」と思いを口にしている。

 「代表から帰ってきて試合に出るルーティンは、去年も(福島で)やっていたので苦にはしていません。でも、試合に出るためにやることが多いのがフロンターレ。すんなりと試合に使ってもらえるクラブでもない。アピールする時間をもっと増やさないといけない。それは代表に行く行かないは関係ないし、代表を理由にせず、麻生でしっかりとアピールしたいと思ってます」

U-20日本代表で10番を背負っている大関は、2月に開催されたアジアカップでは全5試合に出場。1得点も挙げてW杯出場権獲得に貢献していた

 味スタで彼は、試合中の大島のプレーをひたすら観察していたのだという。そして、その巧さに舌を巻いたと話し始めた。……

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Profile

いしかわごう

北海道出身。大学卒業後、スカパー!の番組スタッフを経て、サッカー専門新聞『EL GOLAZO』の担当記者として活動。現在はフリーランスとして川崎フロンターレを取材し、専門誌を中心に寄稿。著書に『将棋でサッカーが面白くなる本』(朝日新聞出版)、『川崎フロンターレあるある』(TOブックス)など。将棋はアマ三段(日本将棋連盟三段免状所有)。Twitterアカウント:@ishikawago

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