
新・戦術リストランテ VOL.62
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第62回は、CLラウンド16で優勝候補のリバプールを撃破したパリSG。フランス王者は準々決勝でもアストンビラを下してベスト4入りを決めた。今や欧州最強かもしれないルイス・エンリケのチームは、なぜここまで強くなったのか、西部謙司が考察する。
ウイング三枚刃の切れ味
ラウンド16でリーグフェーズ首位だったリバプールを下し、にわかにCLの優勝候補に浮上したパリ・サンジェルマン。ウイングプレーヤー3人の3トップという、ありそうでないシステムを使っています。
デンベレ、クバラツヘリア、ドゥエ(またはバルコラ)はいずれも突破力のあるウイングプレーヤーで、いちおうCFはデンベレがやっていますが流れの中で3トップの入れ替わりがあります。
両足利きのデンベレは左右、中央を問いません。クバラツヘリアは左が本職ですが右もできるしCFもいちおうできます。バルコラ、ドゥエも同じく。ただ、CFに関しては誰がやっても「偽9番」になります。
カウンターアタックが強力。前向きにボールを持った時に1対1の優位性があるのは大きいです。かつてのバルセロナにおけるMSN(メッシ、スアレス、ネイマール)に似ています。そういえばあの時のバルセロナの監督もルイス・エンリケでしたね。1人外せば数的優位を崩せる。同数なら1対1に優位性があるので、ほぼフィニッシュまで行けます。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。