アタランタ内紛劇。昔気質の名監督・ガスペリーニと大エース・ルックマンの確執と雪解け

新・戦術リストランテ VOL.57
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第57回は、近年のアタランタ躍進の立役者である昔気質の名監督ガスペリーニと大エースであるルックマンの確執から見えてくる、監督とエースの複雑な関係について思いを馳せてみたい。
ルックマンの日
セリエA第28節ユベントスvsアタランタは0-4でアタランタが圧勝。一時は首位に立っていたアタランタは現在3位。この勝利で4位ユベントスに6ポイントの差をつけ、2位ナポリとは1ポイント、首位のインテルとは3ポイント差となっています。
ルックマンの日でしたね。アタランタは何度もこういう試合があります。昨季のEL決勝でレバークーゼンに快勝した時もそうでした。
29分にレテギのPKで先制。46分にはルックマンのシュートをGKデ・グレゴリオが弾いた後のこぼれ球をデローンがゲットして0-2。66分の3点目はザッパコスタがコラシナツとのコンビネーションから決めていますが、左に開いたルックマンのパスからの攻め込みでした。そして72分にルックマンがカットインからのシュートで4点目。
4点中3点に関与したルックマンは、その他にも際どいシュートやパスでユベントスのゴールを脅かし続けていました。
ユベントスはほぼ何もできず。後半はボールをキープして攻め込んでいますが決定機は作れず、その手前の段階でことごとくパスをカットされ、ボールを失っていました。ボールポゼッションはユベントス61%、アタランタ39%ですが、シュート数は11対18。前半はユベントス3本、アタランタ12本と完全に主導権を握られていました。
アタランタの強みはマンマークの守備力です。ユベントスはセリエAの中ではビルドアップが安定しているチームですが、マンマークでつかれてしまうと前進するためのパスを狙われて攻撃が形にならなかった。コロ・ムアニもユルディズもほとんどボールに触れていない状態。強力なアタッカーはいても、そこまでボールを運べていませんでした。
アタランタは自分たちのリズムでプレーしていました。ただ、それだけでは主導権を握れてもゴールは奪えません。自然に失点してくれるほどユベントスの守備は弱くない。
カギを握るのはやはりルックマンでした。……



Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。