“ドイツでも愛される男”板倉滉は新たな扉を開くのか?日本代表DFの飛躍を生んだディテールへのこだわり

遣欧のフライベリューフリッヒ#12
「欧州へ行ってきます」。Jリーグの番記者としてキャリアをスタートさせ、日本代表を追いかけて世界を転戦してきた林遼平記者(※林陵平さんとは別人)はカタールW杯を経て一念発起。「百聞は一見にしかず」とドイツへの移住を志した。この連載ではそんな林記者の現地からの情報満載でお届けする。
今回フォーカスするのは日本代表DF板倉滉。今季は十分に上位を狙える堅調なパフォーマンスを見せるボルシアMGの最終ラインで、板倉はどんな変化を見せているのか。DFとしてこだわるディテールにフォーカスしつつ、今夏からの新たな飛躍の可能性も探ってみた。
感心するほかない“人間力”
人に好かれる能力は才能だと思う。
欧州で取材をし始めてから各国の記者と接することがグッと増えたが、やはり気質は人それぞれだ。オープンマインドな人もいれば、堅い人もいるし、アジア人というだけで興味を示さない人もいる。まさに十人十色と言っていい。
そういった多種多様な人たちと、ある程度以上の関係性を作ろうとすると、やはり簡単ではない。特に外国語が完璧ではないならなおさらだ。多少のコミュニケーションなら取れるといっても、どうしても孤立しがちにもなる。
ただ、板倉滉は違う。
練習を見に行けば、いつも誰かしらの選手と喋っているし、サポーターからも「コウ! コウ!」と呼ばれてファンサービスを笑顔でこなしている。スタッフへの対応もよく、試合後には取材陣に対しても嫌な顔一つせず、真摯に言葉を連ねてくる。その人間性には、常に感心させられてきた。
自身の誕生日に日本食を振る舞ったり、スポーツトレーナーを紹介したり。周りに対して行動できるのも板倉らしさだ。
11月のフライブルク戦で途中からキャプテンマークを巻くシーンもあったが、それもクラブからの”信頼”あってこそ。その人間性もあって、クラブスタッフや選手、サポーターからしっかり愛されていることが伝わってくる。
ドイツ移籍以来最高のパフォーマンス
ブンデスリーガ第24節、ハイデンハイム戦の帰り道。ボルシアMGのサポーターと会話する機会があった。アウェイまで訪れる熱心なサポーターとボルシアMGの歴史についてああだこうだと話した上で、「板倉を取材しにきたんだ」と切り出すと、彼らは笑顔になって「コウは素晴らしいね!」と語りながら、こんなことを言ってきた。……



Profile
林 遼平
1987年生まれ、埼玉県出身。2012年のロンドン五輪を現地で観戦したことで、よりスポーツの奥深さにハマることに。帰国後、サッカー専門新聞『エル・ゴラッソ』の川崎フロンターレ、湘南ベルマーレ、東京ヴェルディ担当を歴任。現在はフリーランスとして『Number Web』や『GOAL』などに寄稿している。