柏レイソルの躍進に見る、Jリーグ戦術トレンド変化の予兆。「ファイトボール」から「フットボール」へ

新・戦術リストランテ VOL.56
footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!
第56回は、J1開幕4試合3勝1分で首位に立つリカルド・ロドリゲス新監督率いる柏レイソルを例に、Jリーグの戦術トレンド変化の兆候について考えてみたい。
“ポジショナルプレーの人”の到来で大改編
柏レイソルが大きく変化することはプレシーズンからわかっていました。監督が井原正巳からリカルド・ロドリゲスへ代わり、新加入選手の顔ぶれを見ても、変わらないはずがなかったからです。
昨年までの柏は井原監督が整備した堅固な[4-4-2]の守備ブロックをベースとする堅守速攻型のプレースタイルでした。しかし、リカルド新監督がボール保持を重視するのは過去に率いた徳島、浦和を見ても明らかで、補強選手もそのための人選になっています。


ちなみに2024年の主力メンバーと2025年を比較してみると、6つのポジションが新加入選手で占められています。今年になってレギュラーの座をつかんだ熊坂、垣田を入れると8つですね。昨年と共通しているのは古賀、小屋松、木下くらい。もう新しいチームと言っていいでしょう。昨年の主力で移籍したのはサヴィオと関根で、その他のメンバーは残っているにもかかわらずの改変です。
明確な方針と人選の妙、そして戦術のディテール
戦術も選手もガラリと変わる中、それがはたして吉と出るかどうかと思っていましたが、プレシーズンマッチ(ちばぎんカップでは千葉に3-0で快勝)の段階でかなり仕上がっていた。
「これまでで最も素晴らしいプレシーズン」(リカルド監督)
千葉はJ2勢としてはハイプレスに定評のあるチームです。ところが、その自慢のハイプレスが全くはまらない。ボールの奪いどころを作れない状態でした。
J1開幕後も柏のパスワークはその威力を発揮。今のところ、おそらくJ1で最もビルドアップの上手いチームでしょう。改革は吉。4戦して3勝1分、まだ序盤とはいえ首位に立っています。
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Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。