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新役職「エナゴリ」任命の相模原で恩返しへ。「この人のためにサッカーをやろう」引退危機も乗り越えた加藤拓己の責任感

2025.02.28

相模原の流儀#13

2023シーズンにクラブ創設者の望月重良氏から株式会社ディー・エヌ・エーが運営を引き継ぎ、元日本代表MFで人気解説者の戸田和幸を指揮官に迎えたSC相模原。新たに築き上げた“エナジーフットボール”の礎を2024年6月より引き継ぐシュタルフ悠紀監督の下でJ2復帰を目指す中、“緑の軍団”が貫く流儀に2021年から番記者を務める舞野隼大氏が迫っていく。

第13回では、2025シーズンのキャプテン、副キャプテンと同時に発表された謎の役職「エナゴリ」の正体が明らかに。引退危機も乗り越えて任命された加藤拓己が抱く責任感とは?

「最初は『エナジー大使』とつけようと思っていたけど…」

 2025シーズン開幕前の2月5日、SC相模原は新シーズンのキャプテンと副キャプテン、そしてもう1つの新ポストを発表した。

 「エナゴリ」──。どこかで聞いたことがあるような、ないような役職に就任したのは、清水エスパルスより2022シーズン以来2度目の期限付き移籍で加入したFWの「ゴリ」こと、加藤拓己だった。

 確かに加藤拓は練習中でも積極的に声を発し、身体も180cm・84kgと大きく、その存在感は強い。暑く熱と光を発し、人を巻き込むパワーを持ちながら、まるで太陽のように周囲を惹きつけている。

 「エナジーフットボール」を掲げているクラブによると、エナゴリとは「チームに常に野生的なエナジーをもたらす、エナジー大使」という意味を持つそうで、シュタルフ悠紀リヒャルト監督が自ら命名し、25歳とまだ若いゴリにそのポストを与えた。

 「どのチームにもいわゆる“盛り上げ役”がいると思っています。自分は前所属先でもいろんなリーダーシップを選手に求めていて、それを役職として与えることで発言をしやすくし、本人にも責任感を持ってしっかりと取り組んでほしいという意図がありました。由来ですか?ネーミングは正直なんでもよくて、最初は『エナジー大使』とつけようと思っていましたけど、みんなから『ゴリ』って呼ばれているので、『エナゴリ』の方がしっくり来るんじゃないかという、みんなのアイディアもあって『エナゴリ』にしました(笑)」

 当の本人は就任のリリースでも綴っていたが、「どんな時もクラブエンブレムのために行動すること」を1つの信条にしている。所属元の清水は、サッカー王国・静岡県に拠点を置くオリジナル10クラブ。地域に根差し、街の中心になっている様をゴリは肌で感じてきた。だからこそ、“これからのクラブ”である相模原の選手やサポーターを巻き込んで、同じような環境へと発展させたいと考える。“盛り上げ役”の域はチーム内にとどまらず、地域へと及んでいる。

 ただ、加藤拓にとって相模原はドライな言い方をすれば「レンタル先」にすぎない。かつて在籍したことがあるとは言えど、2022年5月末に途中加入してシーズン終了より早い10月初旬に清水へ復帰したため、期間としてはわずか4カ月だった。

 それでも、ゴリの相模原へ対する思い入れも、サガミスタからのゴリへ対する思い入れも深い。

 「前回在籍させてもらった4カ月で本当に多くのことを学びましたし、その中には清水で学べなかったこともたくさんありました。プロデビューさせてもらったのも相模原で、サガミスタも、フロントスタッフもみんながすごくよくしてくれて、心のどこかに常に存在していた特別なクラブ。だからこそ、前回の在籍時に『このクラブを相模原市の誇りであり続けるクラブにしたい』『プレー以外でもチームのために行動しなきゃいけない』と当時は取り組んでいました」

……

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Profile

舞野 隼大

1995年12月15日生まれ。愛知県名古屋市出身。大学卒業後に地元の名古屋でフリーライターとして活動。名古屋グランパスや名古屋オーシャンズを中心に取材活動をする。2021年からは神奈川県へ移り住み、サッカー専門誌『エル・ゴラッソ』で湘南ベルマーレやSC相模原を担当している。(株)ウニベルサーレ所属。

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