「いわきでJ1に昇格する」 新潟からカムバックを果たした新キャプテン、遠藤凌が抱く決意

いわきグローイングストーリー第5回
Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。
第5回では、新潟から完全移籍を果たし、いわきにカムバックを果たした遠藤凌の決意に焦点を当てる。キャプテンに就任した経緯や完全移籍加入に秘めた思いに耳を傾けた。
まさかのキャプテン就任とその狙い
1月20日から29日にかけて鹿児島キャンプを実施したいわきFC。キャンプから本拠地に戻ってきて最初のトレーニング前のミーティングで田村雄三監督から今シーズンのキャプテンの発表があった。
「今シーズンのキャプテンは遠藤凌。副キャプテンは山下優人、山口大輝、ブワニカ啓太です」
事前に彼らは監督室に呼ばれて役職を担うことを告げられた。遠藤凌は「はい」と返事をしたものの、「まさか自分がキャプテンになるとは」という驚きがあった。
遠藤のキャプテン就任にあたって田村監督は「遠藤はディフェンスリーダーとしての期待、それから1年半、いわきで修行して新潟に戻ってからも悔しい思いをして、再びいわきに来てくれた。その想いを汲み取りたいし、もう一回頑張ろうという意味でもプラスになる」と判断し、遠藤にキャプテンマークを託した。
遠藤が主将を担うのは桐蔭横浜大学在籍時以来だ。橘田健人(川崎フロンターレ)や鳥海芳樹(ヴァンフォーレ甲府)ら同期が7人プロ入りする世代の一員として、また後輩にはいわきに期限付き移籍で加入した早坂勇希や山田新(川崎フロンターレ)など個性が強いチームを一つにまとめていた。遠藤の世代を最後尾から支えていた早坂は「チーム思いの選手でプレー面は身を粉にして戦える選手」と話す。旧知の間柄から「後ろがしっかりしていれば遠藤選手も思い切ってプレーできると思うので、その環境を作っていきたい」と早坂自身も今シーズンに向けて強い覚悟を口にした。

異例のローテーション制から固定制に変えた理由
昨シーズン、いわきはゲームキャプテンを置かなかった。チームキャプテンをGK田中謙吾氏(現役引退)が担い、ゲームキャプテンは異例のローテーション制を採用した。田中がこう話していた。
「自分自身、いわきに来るときからその覚悟はありました。ローテーション制なので一人一人がキャプテンシーを持つこと。チームを引っ張る思いを持ってほしい。選手一人では何もできないので皆でコミュニケーション取ってやるという意味では良い取り組みだと思います」
若い世代の選手に精神的な成長を促す意味合いもあった。
田村監督は「そのときの試合直前の雰囲気を踏まえつつ、キャプテンを背負うことでプレーが悪くなる選手に任せることは避けたい」と基準を設けていた。結果的に「みんなが我が事としてやってくれて、それはそれで良かった」と振り返る。実際にキャプテンマークを巻いたのは10人だった。
・10試合:山口大輝、山下優人
・5試合:谷村海那
・4試合:照山颯人(現V・ファーレン長崎)
・3試合:立川小太郎(現FC今治)
・2試合:西川潤(現サガン鳥栖)
・1試合:大森理生(現FC今治)、堂鼻起暉、ブワニカ啓太、有馬幸太郎(現大分トリニータ)
では、今年はどうするか。……



Profile
柿崎 優成
1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。