開幕戦から窺う2025シーズンの色彩。樹森大介監督が変化をもたらしつつあるアルビレックス新潟の現在地

大白鳥のロンド 第20回
日産スタジアムに乗り込んで行われた横浜F・マリノスとの開幕戦。結果こそ引き分けだったものの、樹森大介新監督が率いるアルビレックス新潟は、攻守にわたって明らかな変化の兆しが見て取れるポジティブな90分間を繰り広げた。では、指揮官はこのチームに何をもたらし、どこを目指そうとしているのか。横浜FM戦ではキャプテンマークも巻いた宮本英治の言葉を交えて、野本桂子が新生アルビの現在地を綴る。
見えてきた攻撃の輪郭。増加した背後を狙う回数
攻撃も守備も、臆することなく前へ、前へ。
チャレンジングなサッカーで、“樹森アルビ”は試合の主導権を握った。
水戸ホーリーホックのコーチだった樹森大介氏を、新監督に迎えたアルビレックス新潟。初陣の舞台は、横浜F・マリノスの本拠地・日産スタジアム。昨季までの[4-3-3]から[3-4-2-1]に変えて臨む横浜FMに対し、新潟も[4-2-3-1]から[4-4-2]の新布陣でスタートした。キャンプでの取り組みが、いよいよベールを脱いだ。
攻撃の変化は、背後を狙う回数の増加。
自陣からパスを繋いで攻撃を組み立てるスタイルは継続しつつも、アタッキングサードでは、ミスを恐れず仕掛けることを求める。また有効なスペースが共有できれば、ロングフィードやアーリークロスで一気に背後を突いていく。
第1節・横浜FM戦の26分、橋本健人が左サイドのハーフウェーライン付近から送ったボールに、対角の太田修介が抜け出して決めた先制ゴールは、まさに今季を象徴するシーンだった。
際立った守備の変化。ポイントはハイプレスの強度
守備の変化は、ハイプレスの強度。
相手が横、あるいは後ろへのパスを選択した瞬間、ファーストディフェンダーが一気に間合いを詰めてサイドへ誘導。そこから連動したマンマークで相手をつかまえ、選択肢を奪っていく。プレス強度も高く、相手が蹴ったボールはターゲットまで届かずに、ほぼ中盤で回収できた。サイドへ展開されても素早い切り替えで挟み込み、61分までは相手のシュートを0に抑えることに成功した。
70分以降、横浜FMが、勝手知ったる4バックに戻したことで主導権を握られ、相手CKの流れから与えたPKで1失点を喫した。だが90分を通して攻守に一体感を持ち、球際で厳しく対応する姿勢は貫かれた。
試合後、樹森監督は「勝点3を取りに来たので、非常にそこだけがもったいない」と受け止めつつも、「守備強度の高さは出していきたいと話をしていた中で、選手が臆することなく、それにチャレンジしてくれたところが1番良かった。もちろん切り替えのところも。課題は、決定機でしっかり決めきるところ。あとは強度が高くなると、どうしてもファウルのリスクがある。実際、それでPKになってしまったので、ゴール前は我慢強く対応するというところも、これからやっていかないといけない」と、手応えと課題を語っている。
試合後、選手たちからも「監督が求めていることはすごく表現できた」(太田)「やりたかったことをできた時間帯が多かったからこそ、勝つに値するゲームだった」(橋本)という言葉が聞かれたように、悔しさはありながらも、内容には一定の手応えはつかめた一戦となった。
「強度や切り替えは習慣」
新潟は開幕戦まで、宮崎と高知で約1カ月に渡るキャンプを行った。今季は新加入選手10人と、レンタルバック選手4人が加入。選手のみならず、監督をはじめとするコーチングスタッフも大幅に刷新された中で、新チームを構築してきた。……



Profile
野本 桂子
新潟生まれ新潟育ち。新潟の魅力を発信する仕事を志し、広告代理店の企画営業、地元情報誌の編集長などを経て、2011年からフリーランス編集者・ライターに。同年からアルビレックス新潟の取材を開始。16年から「エル・ゴラッソ」新潟担当記者を務める。新潟を舞台にしたサッカー小説『サムシングオレンジ』(藤田雅史著/新潟日報社刊/サッカー本大賞2022読者賞受賞)編集担当。24年4月からクラブ公式有料サイト「モバイルアルビレックスZ」にて、週イチコラム「アイノモト」連載中。