REGULAR

アトレティコの可変[4-4-2]の実態は5⇔6バック。マドリーを苦しめた撤退守備の興味深い構造

2025.02.12

新・戦術リストランテ VOL.53

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第53回は、ラ・リーガ第23節レアル・マドリーvsアトレティコ・マドリーのマドリッドダービーを題材に、シメオネが鍛え上げたアトレティコの可変守備を考察してみたい。

マドリッドダービーは「矛盾対決」

 ラ・リーガ第23節はレアル・マドリーvsアトレティコ・マドリーのダービーがありました。結果は1-1の痛み分け。3位バルセロナがセビージャに快勝(4-1)したので、いよいよ優勝争いが熾烈になってきました。

 マドリッドダービーはいわゆる矛盾の対決だったわけですが、アトレティコの守備が面白かったです。

 スタートのシステムは[4-4-2]。ところが4バックで守っている時間はほとんどありません。5バック、6バックと可変していきます。

 前半、レアルはこれに手こずっていました。アトレティコが[6-2-2]になってしまえば後方はノープレッシャーで保持できます。しかし、アトレティコが待ち構えているエリアへの侵入ができません。ローブロックがめちゃ固い。

 そうこうしているうちに、チュアメニがリノの足を踏んづけてPK。アルバレスが真ん中に決めてアトレティコがリードします。PK判定は厳しかったですね。クロスに反応したチュアメニの着地しようとする場所に、後からリノの足が入って来たようにも見えました。ともあれ、ほぼ専守防衛だったアトレティコがリードとなります。

6バックは前に出る迎撃要員の供給源でもある

 アトレティコはマルコス・ジョレンテ、ヒメネス、ラングレ、ハビ・ガランの4バックですが、一般的にイメージされる4バックとは少し違っています。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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