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新生リバプール、「クロップの遺産」継承は順調。あとはスロットの色をどう重ねていくか?

2024.10.23

新・戦術リストランテ VOL.38

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第38回は、プレミアリーグ第8節でチェルシーを下し首位をキープしているリバプール。ユルゲン・クロップという名将の後を受けて順調なスタートを切っているアルネ・スロット新体制の現在地とこれからを考えてみたい。

カリスマ監督の後継者問題

 圧倒的なカリスマだった監督の後任というのは、いろいろ比較もされるでしょうし、すごく大変そうです。マンチェスター・ユナイテッドでファーガソン監督が勇退した後、数々の実績ある有名監督が就任しては解任という流れを見てもそう思います。

 ただ、カリスマ監督を失ったら必ずチームが弱くなると決まっているわけではありません。むしろ、カリスマが去った後の方が成功するケースはけっこうあります。

 例えば、プレッシングで一世を風靡したサッキが退任した後、カペッロ監督が率いていた時期にミランは全盛期を迎えました。パフォーマンス的にどうだったかはさておき、タイトル数はカペッロ時代の方がずっと多かった。1970年代のバイスバイラーが去った後のボルシアMGも同じ。ボルシアMGはバイスバイラーとともにブンデスリーガのトップに上り詰めたクラブでしたが、より多くのタイトルをもたらしたのは後任のラテック監督でした。Jリーグなら、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督の後任だった森保一監督の下でリーグ連覇を成し遂げた広島。風間八宏監督の後の鬼木達監督(川崎)が思い浮かびます。

 リバプールはクロップ監督が昨季で退任し、スロット新監督を迎えました。

 リバプールは名将シャンクリーの引退後に2人の後任者の下でチャンピオンズカップ制覇など黄金期を築きました。カリスマ後に、より成功したクラブの代表格と言えるかもしれません。

 プレミアリーグ第8節、チェルシーを迎えた上位対決を2-1で勝利しています。

 内容的にチェルシーを圧倒していたわけではないのですが、それだけに力を感じさせる勝ち方ではありました。けっこう攻め込まれる時間もあった。しかし、その押し込まれている時間帯にPKを得てサラーが先制しています。さらに48分に同点にされた直後にジョーンズがすかさず2点目。リバプールらしい勝ち方でもありました。

 ただ、この場合のリバプールらしさは、クロップ前監督のリバプールらしさです。それがスロット監督らしさなのかどうか。そのあたりが、カリスマ後の未来と関わってくるような気もします。

チェルシー戦で輝いたのは「カウンター」

 29分のサラーのPKによる先制点まで、押していたのはむしろチェルシーの方でした。……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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