サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #9
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第9回(通算187回)は、低迷するセレソンの未来を救うか? ネイマールも「天才」と褒めちぎる、今ブラジルで大注目の新星アタッカーについて。
みんな大好き“メッシーニョ”の成長物語
今季、ブラジル国内で著しい成長を遂げ、将来を期待されているのがこの若者だ。
エステバン。2007年4月24日生まれの17歳だ。左利きの右ウイングで、超高速またぎフェイントとスピードの緩急を駆使し、縦へ突破してクロスを入れ、あるいはカットインして左足から強烈なシュートを放つ。マーカーの体重移動を見極めてからドリブルのコースを選択するので、DFとしては止めるのが極めて難しい。
トリッキーな動きで果敢にドリブル突破を仕掛け、がむしゃらにゴールを狙うプレースタイルが、所属するパルメイラスのサポーターから溺愛されており、試合前の選手紹介ではいつもチームで最も大きな喝采を浴びる。
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。