サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #1
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌の創刊当初から続く連載コラムのWEB移行初回(通算179回)は、ファビオ・カリーレの二重契約問題について。J2開幕の1カ月前に、ブラジルではサントスとその“新監督”の2024シーズンが当たり前のようにスタートしている。
2月7日に行われたサンパウロ州選手権(1月20日〜4月7日)の第6節で、サントスが超満員の観衆で埋まったホームスタジアムで宿敵コリンチャンスを1-0で下した。ここまでの成績は5勝1敗、グループステージ首位とあって、ファンは大喜びだった。
試合後の記者会見場では、サントスのファビオ・カリーレ監督が「これからチームはまだまだ強くなる」と力説している最中に、この試合に招待されていたクラブのレジェンド、ネイマール(現アル・ヒラル。左膝の故障の治療とリハビリのため帰国中)が「乱入」。50歳の新指揮官と抱き合って言葉を交わした。
サントスがカリーレの「獲得」を発表してから、すでに50日以上が経過した。彼はサントスの監督として当たり前のように振舞っており、もはやそれが日常となっている――。
サントスの主張と現状、何の不安もない様子の当人
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。