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不公平極まりないスペイン独自の補強ルールの是非を問う

2020.06.22

 スペインだけの移籍ルールが問題になっている。

 6月18日、セルタはセビージャからノリートの獲得を発表した。現在17位のセルタはリーガ最少の22得点で得点力不足に苦しんでおり、攻撃陣を補強して残留を達成したい考えだ。

GKの「代役」としてFWを獲得?

 この移籍市場外の移籍は、「選手が病気や負傷で5カ月以上の活動不能になる場合は、代わりの者を選手登録できる」というスペインだけの独自ルールを利用して行われた。国際移籍は禁止されており、国内移籍だけが対象だ。

 FIFAは国際移籍条項に反するとしてこのローカルルールの廃止を求めているが、国際移籍条項が定められる前にあったルールのため、そのまま存続してきた。

 よく考えてみると、いろいろ問題があるルールだ。例えば「代役」のはずなのに、長期負傷のGKセルヒオ・アルバレスの代わりにセルタが獲得したノリートはFWである。これでは「補充」ではなく単なる「補強」だ。

 また、全治期間の制限も曖昧だ。「全治○カ月の見込み」などと発表される治療期間に不確定な要素が多いのはご存じの通り。4カ月の負傷に対して「全治5カ月」という診断書を書くのはさほど難しくはなく、スペインサッカー連盟がそれを見破るのは極めて難しいことのように思える。

公正を踏みにじる行為も可能に?

 さらに、選手を獲られた側の被害を考慮していない、という問題もある。

 ノリートの場合は戦力外でセビージャも了解の上の移籍だったから問題はないが、2月にバルセロナがデンベレの代役として獲ったブライスウェイトは違約金を払っての一方的な移籍、つまり強奪だった。

 この時、レガネスはブライスウェイトの「代役」の補充を認めるよう連盟に訴えたが、これは却下された。認めると移籍の連鎖が起きてキリがなくなるから、というのが理由だ。

 これはこれでその通りだが、長期負傷の被害は考慮するのに引き抜きの被害は考慮されない、という矛盾が起きる。

 つまりこのルールは、シーズン途中にたまたまケガをした戦力外選手を長期負傷者扱いにして補強する、最悪の場合ライバルチームから選手を引き抜いて相手の弱体化も図る、という、コンペティションの公正さを踏みにじる行為の温床になりかねないのだ。

 レガネスは冬の移籍市場でチーム得点王のエン・ネシリを、やはり違約金を払われるという方法でセビージャに強奪されている。今年に入ってブライスウェイトの分と合わせてチーム得点の70%を失った計算だ。

 現在18位で残留争いの最中にいるが、最終的に降格した場合、このローカルルールの是非が問われることになるのは間違いない。


Photo: Getty Images

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セビージャセルタノリートバルセロナレガネス移籍

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。