NEWS

ワトフォードGKベン・フォスター、名将たちとのエピソードを語る

2020.05.04

 元イングランド代表FWピーター・クラウチがMCを務めるポッドキャストは、選手の本音が聞けることで人気を博している。先日、その番組にワトフォードのGKベン・フォスターがゲスト出演した。

 イングランド代表歴のあるフォスターは、番組内で自身のキャリアを振り返り、これまで出会った名将たちとのエピソードを明かした。そもそもフォスターがプロ選手になれたのは「事故」のおかげだったという。

ユナイテッドで経験した苦難の日々

 当時10代だったフォスターは、料理人として働きながら8部リーグでプレーしていた。そんなある日、高速道路で交通事故が発生し、それを迂回しようとしたストークのスカウトが“たまたま”フォスターの試合を見に来たという。そのスカウトに認められ、2001年にプロの世界に足を踏み入れた。「プロになれるかどうかは些細な差なんだ」とフォスターは笑う。

 2005年にはマンチェスター・ユナイテッドに引き抜かれるのだが、その時も運の要素があった。経験を積むためにストークからローン移籍した3部のレクサムには、サー・アレックス・ファーガソン監督の息子であるMFダレン・ファーガソンも所属していた。そして同チームが下部リーグのカップ戦で決勝まで進むと、息子の雄姿を見るためにサー・アレックスが観戦に訪れたのだ。

 それがきっかけでユナイテッドに加入できたわけだが、2009-10シーズンには悪夢を見る。ようやく出場機会を得たはいいが、マンチェスター・ダービーで「散々な」プレーをしてしまい、土壇場のゴールで勝ったとはいえ試合後に大目玉を食らったそうだ。

 「試合後、ファーガソン監督は喜ぶ選手たち黙らせて、みんなの前で私を叱った」と振り返る。「次やったら終わりだ」とまで言われたという。

 そして2週間後のサンダーランド戦で相手FWに競り負けて失点を喫すると、再びファーガソン監督の有名な“ヘアドライヤー”を浴びることになり、ユナイテッドでのキャリアはそこで終わった。即座にリザーブチームに落とされたのである。その時に励ましてくれた仲間はポール・スコールズだけで、他の選手は声もかけてくれなかったという。

 傷心したはずだが、「少し厳しすぎるように思うが、当時の僕はまだユナイテッドでプレーする器量がなかったということだ」と話す。

 ユナイテッド時代には他にも洗礼があった。加入当初、プレシーズンの親善試合で大先輩のMFロイ・キーンに叱れらたという。キーンは、フォスターからのフィードパスが遅かったとして、ボールをトラップした後にフォスターを叱責。それから反転してドリブルを始めたそうだ。でも「そういう経験が糧になった」とフォスターは懐かしがる。

カペッロやピュリスとの逸話も紹介

 イングランド代表では、同チームを率いていたイタリアの名将ファビオ・カペッロに失望させられたと明かす。妻の出産に立ち会いたいと相談したら、監督が難色を示したというのだ。

 結局、立ち会うことは許されたが、無事に息子が生まれた数時間後にカペッロ監督から「翌日の試合で後半から起用するから戻って来い」と電話がかかってきたという。急いでチームに再合流したが、その試合では全く起用されなかったという……。

 ウェストブロミッチ・アルビオン時代には、トニー・ピュリス監督の下で“面白い経験”もした。2016-17シーズンの最終節、華麗なパスサッカーで有名なスウォンジーと対戦した際、自分たちも触発されて良いプレーをして前半を1-0で折り返したという。

 しかしハーフタイムに控え室に戻ると「何やっているんだ!」というピュリス監督のお叱りが待っていた。ピュリス監督はピッチの図を取り出すと、両ペナルティエリアを除いた中央のスペースをペンで塗りつぶし、ボックスを指さして「“バルサ”のクソなんて無視しろ。ここに飛び込め」と指示したそうだ。その結果、ウェスト・ブロムは1-2の逆転負けを喫することになった……。

 ピュリス監督については、クラウチもストーク時代のエピソードを持ち出した。12-13シーズン、昇格組のレディングと対戦した際、ストークが得意のロングスローから幾度となく空中戦を仕掛けると、相手のMFジョビ・マカナフがクラウチの方を見て「プレミアを目指して何年も頑張ってきたのに、これかよ……」と言い放ったという。

 やはり個性的な監督には、個性的なエピソードがいろいろあるようだ。


Photo: Getty Images

TAG

サー・アレックス・ファーガソンピーター・クラウチファビオ・カペッロベン・フォスターマンチェスター・ユナイテッド

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。