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プレミアで再起を期する元神童。「内なる悪魔」を追い出せるか

2019.07.21

元ユナイテッドの神童、イングランドに帰還

 “神童”と呼ばれながら消えていった選手は少なくない。だが、ウェイン・ルーニーやポール・ポグバを超える逸材と称えられながら消えかけた男は、彼以外に思い当たらない。その選手こそ、今夏シェフィールド・ユナイテッドに加入した26歳のMFラベル・モリソンである。

 モリソンはマンチェスター生まれで、マンチェスター・ユナイテッドの下部組織出身。あのアレックス・ファーガソンが太鼓判を押した才能であった。ユナイテッドを率いていたファーガソンはあるとき、当時のトップチームの主力だったリオ・ファーディナンドやルーニーを呼び出し、「この少年を見てみろ」とモリソンについて語ったという。「若い頃のルーニーやライアン・ギグスよりも上だ。これ以上の少年は現れないだろうね」と。ユナイテッドの関係者の中には、彼を「ジョージ・ベスト以来の才能」と絶賛する者もいたという。

 元ユナイテッドのギャリー・ネビルも、その才能に魅せられた1人だ。当時のユナイテッドのユースチームは粒ぞろいで、モリソンのほかにポグバやジェシー・リンガード、現在はエバートンで活躍するDFマイケル・キーンなどもいた。だがネビルの目に留まったのはモリソンだった。「ポグバも素晴らしいが、本当に試合を変えられるのはモリソンだった」とネビル。「ケタ外れの才能だ。敵を抜き去って信じられないゴールを決めてしまう。ポール・ガスコインのようだった」と。

ユナイテッドのユースでモリソン(右)はリンガード(左)らとプレーした

 しかし、それから8年ほど経ち、当時のチームメートたちが国際舞台で名を轟かせる中、モリソンはスウェーデンのエステシュンドにいた。そして今夏、スウェーデンを離れてイングランドに戻り、シェフィールドの練習に参加し、何とか1年契約にこぎつけた。なぜ彼は、これほどの遠回りをすることになったのか? それはモリソンが持つ「悪魔」のせいだという。

「私が見てきた中で最も才能を無駄にした選手」

 モリソンは“悪い仲間”との縁を切れなかったのだ。彼の仲間がナイフをチラつかせて強盗事件を起こしたことがある。モリソン本人は無関係だったが、彼はその被害者が証言しないように説得しながら脅してしまい、少年院に送られかけた。交際相手とのいざこざで裁判沙汰になったこともあった。ユナイテッドでも、本人は否定しているがチームメートの腕時計を盗んだ疑いをかけられた。さらに彼は、遅刻や無断欠勤の常習犯でもあった。

 ファーガソンは、著書の中でこうつづっている。

 「ギグスやクリスティアーノ・ロナウドくらいの才能を持ちながらも、内なる悪魔や幼少期の心の傷に屈してしまう者がいる。最も残念な例がラベル・モリソンだろう。彼は歴代選手の誰にも負けない才能を持ちながら、問題を起こし続けた。2012年に彼をウェストハムへ売るときは私も辛かった」

 その後もモリソンは改心しなかった。ウェストハム時代のチームメートだったケビン・ノーランはBBCラジオにこう話す。

 「あるプレシーズンの試合で大活躍し、今季こそ“彼のシーズン”になると思った。試合後、チームバスを降りて『また明日な』と声をかけたが、それから1週間、彼は無断欠勤した……」

 当時のウェストハムを率いていたサム・アラダイス監督は、「私が見てきた中で最も才能を無駄にした選手」と言い放った。結局モリソンは、イングランドを離れてイタリア、メキシコ、スウェーデンを転々とすることに。そして今夏、イングランドに戻ってきたモリソンは、26歳にして“最後のチャンス”とも言われている。

 彼のここまでのキャリアを振り返ると、最も輝いた瞬間は2011年のFAユースカップだろう。モリソンは決勝戦で2得点してユナイテッドを頂点に導いたのだ。おそらく、これは運命なのだろう。その決勝戦の相手こそ、現イングランド代表DFハリー・マグワイアなどを擁したシェフィールド・ユナイテッドだったのだ!


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。