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環境が変われば、状況は変わる。柴崎岳、スペイン2部から再挑戦。

2019.07.16

移籍金の支払いはデポルが「昇格した場合のみ」

 柴崎岳のデポルティーボ移籍が決まった。

 数日前にヘタフェが「移籍先を探している」と発表していたばかりだった。契約期間は4年で、移籍金は「今季19-20に1部昇格した場合のみ支払う」(デポルティーボの公式声明より)という条件だ。

 スペインの1部クラブ、海外のクラブからもオファーがあったが、本人が昇格を狙う2部強豪を希望したという。柴崎は2017年冬の移籍市場で2部テネリフェに移籍し、昇格プレーオフに参戦して敗れた後にヘタフェから声を掛けられている。その時の経験から、出場機会を得られる2部のチームで活躍することが1部再チャレンジの近道、と考えたのかもしれない。

 デポルティーボは昨季6位で昇格プレーオフに参戦。決勝の第1レグに2-0で勝利し昇格確実と思われたが第2レグに3-0で敗れ、マジョルカに昇格枠を譲っている。1990年代後半から2000年代初めにかけて黄金期を迎え日本でも「スーペル・デポール」の名で親しまれたクラブで、99-00にはリーグ優勝、03-04にはCL準決勝進出を果たしているが、第1次放映権料バブルが終わった後は人口25万人の地方都市というホームタウンの身の丈に合った、1部と2部を行き来するクラブという位置付けに落ち着いた。

 柴崎にデポルティーボ行きの話が出るのは初めてのことではない。同クラブのスポーツディレクターによると1月の冬の移籍市場での昇格ボーナス付きレンタルで本人ともヘタフェとも合意ができていた、という。それを最後の瞬間でボルダラス監督が覆し、破談になっていた。

目指すは昇格のヒーローになって1部復帰

 昨季前半戦の柴崎は、セカンドトップの座をアンヘルやハイメ・マタに奪われ、ボランチの座をマキシモビッチに奪われ、左サイドの座をアマットに奪われて招集すらされない、という状態だった。12月初めにアマットが大ケガをしやっと出場機会が巡ってきたと思われたら左サイドのサム・サイスが加入し、またポジションを奪われる格好になっていただけに、ボルダラスの翻意は不可解だった。

 個人的には柴崎の力が1部リーグに及ばなかったとは思っていない。シーズン終了間際、CL出場権を懸けた天王山セビージャ戦に先発し、2つのPKを誘うCKとFKを蹴ってチームを勝利に導いたのは彼である。ボルダラスの縦に速いサッカー、中盤に創造力ではなく堅守を求めるサッカーに合わなかっただけ。ベティスで出番がなく、冬にアラベスにレンタルされていきなりレギュラーになった乾貴士の例を見ればわかる通り、環境が変われば状況は変わる。

 デポルティーボとともに昇格のヒーローとなって1部リーグへ復帰、ついでにいくばくかのお金をもたらして古巣ヘタフェにも感謝される、という美しいストーリーを期待している。


Photo: Getty Images

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デポルティーボ柴崎岳移籍

Profile

木村 浩嗣

編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。