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引退した「名物GK」キラーイの地元ハンガリーでのブランド活動

2019.06.02

「トレパンの名守護神」が現役に別れ

 5月22日、グレーのスウェットパンツがトレードマークだったGKガーボル・キラーイが、26年間の現役生活からの引退を発表した。

 ハンガリー代表で長らく活躍してきたキラーイが独特なグレーのスウェットパンツを履いている理由は、すでに多く報じられている通り。元々は凍りついたピッチや土のピッチでの試合が多く、足を守るために長ズボンを着用していたのだが、ハンガリー西部、地元クラブのソンバトヘイ・ハラダーシュに所属していた1996年に、元々履いていた黒のパンツを洗濯していたため、初めてグレーのパンツを履いて試合に出場したところ、残留争いをしていたチームが無敗を続けて、降格の危機を免れた。

 のちに移籍したヘルタ・ベルリン、クリスタルパレスでは、一時期ショートパンツを履いて出場することはあったが、ミスが続くとやっぱりグレーのパンツに戻した。“幸運のお守り”ともいえるグレーのパンツはあくまでも試合着であり、普段はジーンズやショートパンツを着用していることが多かった。

 ひと際異彩を放つ風貌に、試合中にグレーのパンツが泥まみれになる様から、所属したどのチームでもカルト的な人気を誇ったキラーイ。97年から7年間プレーしたヘルタでは、チャンピオンズリーグにも10試合出場し、当時現役だったオリバー・カーンと並ぶブンデスリーガ屈指のGKとして名を馳せ、アーセナル、マンチェスター・シティ、レアル・マドリーなどが獲得に興味を示すほどに。98年から4年連続でハンガリーのゴールデンボール(最優秀選手賞)を獲得しており、選手としての全盛期はこのヘルタ時代と言えるだろう。

紆余曲折を経て、EURO2016の大舞台へ

 しかし、2004年にクリスタルパレスへ移籍してからは、非常に苦労の多いキャリアを送っている。移籍したシーズンで32試合に出場するもチームは降格。3年目に自身のミスからポジションを失い、07年夏に移籍したバーンリーではレギュラーに定着できず、09年冬からはセカンドGKの負傷による代役としてレバークーゼンへ期限付き移籍。試合出場が乏しく、代表からも約3年ほど離れた時期もあった。

 09年にドイツへ戻り、2部に降格していた1860ミュンヘンで5年間プレーし、168試合に出場。14年冬には大迫勇也とチームメートになり、日本のファンからも「キラーイおじさん」と親しまれたものの、チームは昇格を果たすことができず。同年夏に移籍したフルアムではミスもあり、出場わずか4試合。ヘルタを退団してからはセカンドGKを務めることも多く、代表落選も経験するなど、苦労の絶えないキャリアを送っていた。

 最後は、15年に地元のソンバトヘイに18年ぶりに復帰してから、引退するまで4シーズンプレー。この時期に、EURO予選のプレーオフでノルウェーを破り、EURO2016でプロキャリア24年でようやく初めての国際大会出場を果たした。ダイナミックなセービングのみならず、股の下を通すトリッキーなスローイング、70年代生まれとは思えない足さばきを見せてスタンドを沸かせ、「出場チーム最弱」の下馬評を覆し、ハンガリーのベスト16に貢献。ベルギー戦では破れたものの、指を骨折しながらもデ・ブライネのFKを防いだセービングは、2016年度のベストセーブにも選出された。

EURO2016に出場し、チームを16今日進出に導いた

 そして契約最終年となった2019年、ソンバトヘイ・ハラダーシュはシーズン序盤から苦戦を強いられた。今年で43歳になったキラーイは、地元クラブを救うべく、キャプテンとしてチームを牽引するが、チームは2部降格の憂き目に遭った。

 決して華やかなキャリアではない。しかし、毎試合グレーのパンツが泥まみれにしながらも、戦い続ける姿は、まるで「頑張ってるお父さん」を見ているような感覚を覚えた人も多いだろう。

地元でスポーツクラブやブランドを展開

現役生活のかたわら、母国ハンガリーで後進の育成やサッカー文化の発展に寄与

 ドイツ、イングランドで長年プレーしてきたキラーイだが、彼は03年、地元ソンバトヘイで総合スポーツクラブ「キラーイ・サバディボーシュポルト」を設立している。ドイツの卓越したスポーツ環境に感銘したキラーイが、当時所属していたヘルタ・ベルリンをモデルに、6面のフットボールコート、4つのオフィスルームを完備した設備を建設したのだ。

 06年には新チーム「キラーイSZE」を設立。ユニフォームの下に毎試合着用していたファッションブランド「ケンゾー」の虎をモチーフとしたロゴを作成し、自らのスポーツクラブを「キラーイブランド(K1raly Brand)」と称した。代表は元サッカー選手で父親のフェレンツ・キラーイが務める。20人以上のコーチと200人以上の選手が在籍し、U-7からU-19までの各年代別のチームと女子チームを所有し、現在ではハンガリー4部にシニアチームを設立。U-14には息子のマティアシュ・キラーイが、父親と同様にグレーのスウェットパンツを履いてプレーしている。

 15年からはリハビリテーション施設も設立し、理学療法士、フィットネストレーナーが常勤。超音波やレーザーなどの機器を持ち、キラーイKZEの選手のみならず、地元トップクラブのソンバトヘイ・ハラダーシュへのサポートにも一役買っている。

 さらに13年からは「キラーイ・ガーボル・インターナショナル・GKスクール・ソンバトヘイ」の開催も実施している。6人のGKコーチが在籍し、年間6回の合宿を開催。世界中の次世代を担うGKがキラーイの技術を求めソンバトヘイに集まるほか、GKスクールも月2回開催している。

 40歳の誕生日となった16年4月1日には、公式ショップ「キラーイショップ」もオープンした。トレードマークのグレーのスウェットパンツはもちろん、オリジナルのグローブ、Tシャツ、帽子、トレーニング用品などを開発・販売している。「僕はファッションモデルではない。見た目は重要ではない」とスウェットパンツを履き続けるキラーイも、自身のショップでは立派なモデルを務めている。現在は「キラーイカフェ」もオープンし、トレーニング風景を見ながら食事を楽しめる施設も併設している。

 26年間の現役生活からは別れを告げたが、自身のブランドで地元ソンバトヘイに貢献していくガーボル・キラーイ。彼の今後の活躍にも期待したい。

Photos: Getty Images

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ガボール・キラーイハンガリー代表ビジネスヘルタ・ベルリン

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