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ガットゥーゾ、愛されながら退団。赤字のミランは生まれ変われるか?

2019.05.29

「ミランとの話に金の問題は持ち込まない」

 セリエAをシーズン5位でフィニッシュし、目標としていたUEFAチャンピオンズリーグの出場権を逃したミラン。28日にレオナルドSD、ならびにジェンナーロ・ガットゥーゾ監督の退団が発表された。

 ガットゥーゾ監督は、単に解任を受け入れただけではなかった。2021年まで結ばれていた契約を破棄し、総額でおよそ500万ユーロ(約6億円)と目される報酬を受け取らないことにしたのである。「ミランとの話に金の問題は持ち込まない」。一般紙『ラ・レプッブリカ』に対しそのように返答をした。

 衛星TV『スカイ・イタリア』によれば、ガットゥーゾは報酬の受け取りを固辞する代わりに、自分とともにミランを辞めるコーチングスタッフの契約順守を願い出たという。これまで指揮を執ったクラブが経営難に陥った時には、所属選手の給与や運営費を一時的に肩代わりしたことも有名で、実に彼らしい去り方だったと言える。「今までありがとう」「別のチームを率いてきた時には心から拍手をしたい」。ネットにおけるミラニスタたちの反応は、おおむねかつてのレジェンドに対して好意的だった。

 地元各メディアの報道によれば、経営権を持つヘッジファンドのエリオット社はガットゥーゾ監督の続投を希望していたという。本人もクラブに愛着があり、サポーターからも好かれていたのだが、プロとしての選択は別。「悩んだが、熟慮した上の結果」というこの選択には、緊縮財政の方針を固めた経営陣との意見の相違が背後にあったともっぱらの噂だ。

赤字経営から戦力規模縮小、若手主体へ

 経済紙『ミラノ・エ・フィナンツィア』によれば、ミランの2018-19シーズンの決算ではおよそ7000万〜8000万ユーロ(約85〜97億円)の赤字決済が見込まれているという。

 中国人経営陣のもとで1億2600万ユーロ(約153億円)もの赤字を計上した2017-18シーズンからは幾分減る見込みとはいえ、巨額なことには変わりはない。UEFAはファイナンシャル・フェアプレー(FFP)違反についての調査も進めており、近く発表される処分では1年間のUEFA主催大会出場停止なども懸念されている。CL出場権を逃したミランは特に係争に持ち込まず、粛々と処分を受け入れる方針だとの見方が地元では強まっている。従って予想されるのは、戦力規模の縮小だ。経営を統括するイバン・ガジディスADは、FFPの基準に合わせるため高年俸選手を整理し、若手主体に切り替える方針を固めていると地元紙では報道されている。一方でガットゥーゾは経験のある選手の補強を希望し、意思が違えた結果、別れの道を選択したとされている。

 後任として噂に上がっているのは、マルコ・ジャンパオロやエウセビオ・ディ・フランチェスコなど育成に実績のある監督ばかりだ。過去2シーズンも実際は若手への切り替えは進んでいたが、その路線はさらに強まることになりそう。「この数年間でまたミランは改革をすることになった。ゼロではなく、マイナスからの再出発だ」。あるベテランのミラン番記者はそう吐き捨てていたが、果たしてどうなるのか。

Photo: Getty Images

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Profile

神尾 光臣

1973年福岡県生まれ。2003年からイタリアはジェノバでカルチョの取材を始めたが、2011年、長友のインテル電撃移籍をきっかけに突如“上京”を決意。現在はミラノ近郊のサロンノに在住し、シチリアの海と太陽を時々懐かしみつつ、取材・執筆に勤しむ。