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スールシャール解任の裏で起きていた、歴史的な出来事の数々

2021.11.24

 マンチェスター・ユナイテッドのオーレ・グンナー・スールシャール監督が解任された先週末は、イングランドのトップリーグにとって歴史的な1日だったようだ。

ともに4失点は55年ぶり

 2019-20シーズンの終了時、プレミアリーグでは20チームのうち実に8チームの監督が選手時代にも所属していたクラブか、子供の頃からサポートしてきたクラブを率いていた。しかし、英紙『The Times』によると、今回のスールシャールの解任より、クラブのDNAを知る監督はアーセナルのミケル・アルテタのみとなってしまったそうだ(ユナイテッドのマイケル・キャリック暫定監督を含めると2人)。

 2年前はフランク・ランパード(チェルシーOB)、エディー・ハウ(ボーンマスOB)、ディーン・スミス(アストンビラのファン)、スティーブ・ブルース(ニューカッスルのファン)といった指揮官がそれぞれの愛するチームを率いていたが、どうやら“クラブ愛”だけではうまくいかないようだ。

 また、先週末のトップ4争いの直接対決ではリバプールが4-0でアーセナルを退けたが、これでリバプールはリーグ戦のホームゲームでアーセナルに6連勝。しかもすべての試合で3点以上を決めたことになる。今回の試合ではFWモハメド・サラーとFWサディオ・マネがそろってネットを揺らしたが、彼らがトップリーグでそろってゴールを決めたのは28試合目。これは1964年から1972年にかけてマンチェスターUの英雄であるボビー・チャールトンとジョージ・ベストが29試合でアベックゴールを決めて以来の快挙だという。

 アーセナルがアンフィールドで悪夢を見た日、ユナイテッドは敵地ワトフォードで1-4の敗戦を喫した。アーセナルとユナイテッドが同日に4失点以上喫するのは、イングランドがワールドカップを制した1966年以来、実に55年ぶりのことだという。当時アーセナルはレスターに2-4、ユナイテッドはノッティンガム・フォレストに1-4の敗戦を喫した。

 これでアーセナルは今季プレミアリーグで得失点差が「マイナス4(13得点17失点)」。同じノースロンドンの宿敵、トッテナムはリーズ相手に逆転勝利を収めてアントニオ・コンテ新監督にリーグ戦初勝利をプレゼントしたが、それでもいまだに得失点差は「マイナス6」。第12節を終えた時点で、ノースロンドンの2チームがそろって得失点差で「マイナス」になるのは1976年以来のことだという。

 ちなみに、コンテ監督は2016-17シーズンにチェルシーでプレミアリーグを制したが、そのシーズンは184日間も首位に立っていたという。これは過去50年間でトッテナムが首位に立った日数(102日)を大幅に超えているそうだ。

トッテナムはアントニオ・コンテ体制で初勝利を挙げたが、いまだに得失点差は「マイナス6」だ

3人で先発出場は14試合

 スールシャールがプレミアリーグから姿を消すことになったが、今シーズンは“ある国籍の選手”が消えかけていると『The Times』は指摘する。というのも、今季はウェールズ人選手の出場機会が激減しているのだ。今季プレミアでスタメン経験があるウェールズ人は、ダニエル・ジェイムズ(リーズ)、タイラー・ロバーツ(リーズ)、ベン・デイビス(トッテナム)の3名だけ。3人合わせて先発出場は14試合。これは全体の0.5%に過ぎず、過去最低の数字だという。

 プレミア初年度の1992-93シーズンには、ウェールズ選手のスタメン率は6.9%もあったが、海外タレントの流入、アーロン・ラムジーやギャレス・ベイルの海外挑戦、カーディフやスウォンジーといったウェールズクラブの2部リーグ低迷など様々な要因が相まって、ウェールズ人が絶滅の危機に立たされているようだ。

ダニエル・ジェイムズらウェールズ人の出場機会が激減しているという


Photos: Getty Images

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Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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