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偶然を必然に変えるリバプール。強さの秘密は歴史に残る「異常値」にあり

2020.08.14

ファンと振り返るリバプール優勝5つの理由】#5

「君たちが我われを王者にしてくれた」――トロフィー授与式でユルゲン・クロップが口にしたのは、5年間で「疑う者」から「信じる者」へ変貌を遂げたサポーターへの感謝の言葉だった。悲願のプレミアリーグ初制覇。歓喜の瞬間を夢見てリバプールを信じ続けてきたファンにとって、30年ぶり国内リーグ戴冠の理由は何なのか。経営、専門家、SNS戦略、ブランディング、データ……独自の視点で名門復活に迫る!

今回は、好評発売中の『リバプール優勝記念号』にグラッド氏が寄稿したデータ分析記事の完全版を公開。今季の独走優勝が決して偶然ではないことを証明する。

【リバプール優勝記念出版】

リバプールのすべて

リバプール優勝記念号

 リバプールは運がよかったのだろうか?

  サッカーは「相手より多く点を取るゲーム」であり、一般に得失点差がプラスになるほど得られる勝ち点は増えていく。下図は19-20シーズンのプレミアリーグ全20クラブの得失点差と1試合平均の勝ち点の関係性を示しており、ほとんどのクラブが直線の付近に並ぶ。30年の時を経てイングランドチャンピオンの座を奪取した“赤い1チーム”を除いて。

 昨今フットボール界で浸透しつつある「xG」(ゴール期待値/Expected Goals)は、実際にシュートを打ったチャンスからゴールとの距離、シュートの角度などを考慮し、得点が生まれる平均的な確率を算出する。この指標を基に計算すると、今季リバプールが記録した勝ち点は「異常値」であることがわかる。

 リバプールの「シュートと被シュートの数と質から算出される期待勝ち点」は、優勝が決定した第31節時点でマンチェスター・シティの「-4.93ポイント」という数値だった。しかし実際には、その期待勝ち点より「+21.66ポイント」も多く稼ぎ、7試合を残して史上最速で優勝を決めてしまった。この期待値と実勝ち点の差は、『Understat』でデータを確認できる14-15シーズン以降リーグ最大の数値となった。 次点はダビド・デ・ヘアが信じられないセーブを連発した17-18のマンチェスター・ユナイテッドだが、それでもシーズン終了時点で「+18.67ポイント」である。

 この異常なデータは2つの見方から解釈できる。まず1つ目は「リバプールは他チームよりも決定力が高く彼らよりも多くのピンチを防いでいる」という視点。 実際にリバプールは「期待得失点差」(+34.87)より「+14.13」多い49の得失点差を稼いでいるからだ。

対戦チームの決定力不足は偶然か?

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ファンと振り返るリバプール優勝5つの理由

Profile

グラッド

中学生の頃ジェラードの右足に魅せられリバプールサポーターに。2017年リバプールサポーターの”情熱”と”情報”が集う場所「リバプール FCラボ」を創設し現在は6名のチームと、サポーターライター陣と共に運営。本業はデジタルマーケティング的な仕事をしつつ経営学の勉強中。