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FFE計画はFIFAが繰り返す「改革の巻き戻し」の延長線上に過ぎない(後編)。「パートナーシップ型ガバナンス」の制度化が急務な理由

2026.08.28

【特集】W杯売却構想はフットボールを壊すのか?#5

史上最多の出場48カ国が世界一の座を懸けて争った北中米W杯の熱も冷めやらぬうちに、フットボールは新たな分岐点に立たされた。閉幕直後の7月28日に、FIFA(国際サッカー連盟)が来年から始まる4年サイクルで211の加盟各国協会・連盟に従来の倍額となる2000万ドル(約32億円)を分配できるという大義名分の下、W杯や女子W杯、クラブW杯などの商業イベントの運営を担う民営子会社「FIFA Forward Enterprise」を新設し、その200億ドル(約3兆2000億円)と評価される株式の少数を売却して今年中に最大42億ドル(約6720億円)もの資金を調達していく“秘密計画”が浮上したからだ。「フットボールは誰の所有物でもない。ましてやFIFAが売る権利を持つものではない」(UEFA/欧州サッカー連盟)――猛反発を受けたW杯売却構想はわずか4日後に撤回される運びとなったが、波紋や余波は今も消えぬまま。その攻防と是非、そして未来を専門家の視点も交えながら読み解いていく。

第4、5回では、FFE計画はFIFAが繰り返す「改革の巻き戻し」の延長線上に過ぎない。根本的なガバナンス改革の必要性、すなわち「パートナーシップ型ガバナンス」の制度化が急務となっている歴史的背景を、FIFPRO(国際プロサッカー選手会)本部の理事を務める山崎卓也弁護士が前後編に分けて解説する。

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十分な説明がなされぬまま「防壁」が解除された2024

 2024年5月17日、バンコクで開催されたFIFA総会においてFIFA規約が改正され、それまで規約に直接規定されていた開発委員会の「少なくとも半数を独立委員とする」という要件が削除され、常設委員会の構成や組織についてはFIFA Governance Regulations、すなわちFIFAガバナンス規則に委ねるという制度に変更された。

 そして、その後のFIFAガバナンス規則改正では、開発委員会について、それまで存在していた「少なくとも半数を独立委員とする」という要件そのものが削除された。

 しかも興味深いことに、財務委員会については、現在でも委員の少なくとも半数を独立委員とする規定が残されている。

 つまり、財務委員会には独立性の保障を残しながら、加盟協会・連盟への開発資金の使途や配分を扱う開発委員会についてのみ、2016年改革によって導入された独立性の保障が外されたのである。

 なぜ、この委員会についてだけ、そのような変更が必要だったのか。

 少なくとも公表されている資料を見る限り、その理由について十分な説明がなされた形跡は見当たらない。

 さらに、現在の2025~29年期の開発委員会の構成を見ると、21名のメンバーのうち、委員長のヌアンパン・ラムサムはタイ協会会長、副委員長のリンドン・クーパーはセントルシア協会会長であり、その他にも各国協会・連盟の現職会長、事務総長などが多数含まれている。旧ガバナンス規則の独立性基準をそのまま適用すれば、こうした現職の加盟協会・連盟幹部は独立委員とは評価できないため、現在の委員構成は、2016年改革が想定した「少なくとも半数を独立委員とする委員会」とは、性格を大きく異にしている。

タイサッカー協会のヌアンパン・ラムサム会長

 このような独立性要件の削除については、当時一部のメディアからも、FIFAがブラッター時代のガバナンスに逆戻りしているのではないかという批判がなされた。

 FIFA総会を構成する加盟協会・連盟が、同時にFIFA Forwardをはじめとする開発資金の受益者でもあるという構造を考えれば、FIFA会長や執行部に対する独立した歯止めを、加盟協会・連盟自身による多数決だけで恒久的に維持するのは困難である。

 スポーツと人権、スポーツ組織のガバナンスなどを調査する英国の非営利団体FairSquareも、2024年に公表した174ページに及ぶFIFAガバナンスの調査報告書『Substitute: The case for the external reform of FIFA』において、FIFAの上層部と一定数の加盟協会・連盟が、開発資金と政治的支持を介して相互依存する関係を「庇護・利益供与のシステム(system of patronage)」と表現し、この構造がFIFAの内部からの改革を困難にしている根本的な原因であると厳しく批判している。

批判に回ったUEFAAFCも抱えるFIFA同様の構造的問題

 今回のFFE騒動でもう1つ注目すべきなのは、UEFA(欧州サッカー連盟)、AFC(アジアサッカー連盟)、CONCACAF(北中米カリブ海サッカー連盟)といった大陸連盟が、FIFAに対して極めて強い批判を行った点である。

 しかし、これらの大陸連盟を、長年にわたりFIFAの外からグッド・ガバナンスを求めてきた独立した監視者であるかのように理解することも正確ではない。

……

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Profile

山崎 卓也

1997年の弁護士登録後、2001年にField-R法律事務所を設立し、スポーツ、エンターテインメント業界に関する法務を主な取扱分野として活動。現在、ロンドンを本拠とし、スポーツ仲裁裁判所(CAS)仲裁人 、国際プロサッカー選手会(FIFPRO)本部理事、世界選手会(World Players)理事、日本スポーツ法学会理事、スポーツビジネスアカデミー(SBA)理事、英国スポーツ法サイト『LawInSport』編集委員、フランスのサッカー法サイト『Football Legal』学術委員などを務める。主な著書に『Sports Law in Japan』(Kluwer Law International)など。

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