クラブの未来を見据えた選択、「U-21 Jリーグ」に参加する理由と意義。清水エスパルス・反町康治GMインタビュー(後編)
【特集】これからのJスカウトに求められる視点#5
今や「欧州組」「日本人対決」という言葉が陳腐化するほど、数多くの日本人選手が海を渡って活躍している。欧州各国からの評価も年々向上し、10代の選手たちのキャリアプランに夢ではなく、リアルな選択肢として「欧州クラブ」が加わるようになった。日本でも秋春制の導入、U-21 Jリーグの創設など大きな改革が進む中で、才能の原石を見つけるプロたちは何を考えているのか?――これからのJスカウトに求められる視点について様々な角度からフォーカスしてみたい。
第4&5回は清水エスパルスの反町康治GM。各Jクラブの監督や五輪代表監督、さらに日本サッカー協会の技術委員長も歴任してきた中で、圧倒的な知見を深めてきた反町氏には、強化担当者として考えるこれから先の選手育成とスカッド編成の展望や、新設される「U-21 Jリーグ」へ参加するにいたった理由を伺った。
「現状を打破していかないと、エスパルスの将来はないと思っている」
――確かにエスパルスは『U-21 Jリーグ』の最初の構想メンバーには入っていなかったですよね。
「そうなんです。その理由の1つは、まずこのリーグ自体の将来性という観点で、エリートリーグがうまくいかず、サテライトリーグも限りなくうまくいかなかった中で、ちょっと不透明であることと、それなりに陣容を揃えないといけないので、いきなり参加すると、先ほども言ったように無理やりユースの選手を上げたりという、高校生のところに負担を掛けてしまう可能性があるということです。
あとは1週間の流れとして、たとえば同じ練習をずっとやってきた選手たちが、週末になって『あなたはU-21の方に行ってください』ということで、試合の前日にパッと分かれることで、チームの分断が生まれてしまうんじゃないかと。
だとしたら、もうちょっと考えて、しっかり準備の時間を作って、素材をちゃんと作り上げてからやった方がいいんじゃないのと。今のウチの若い選手は、ほとんどレンタルに出しているんです。この間も西が丘にクリアソン新宿と沖縄SVの試合を見に行きましたし、その前には土曜日に沖縄SVが、日曜日にFC琉球が同じ会場で試合をやるということで、沖縄まで行って、レンタル選手の現状をチェックしてきました。
それに知恩も群馬に行ったので、その試合も見に行こうと思っていますし、岐阜や秋田の試合も見に行ったりとか、レンタルに出ている選手がどんな状況かも、そのチームの指導者と話をしたりしているんですけど、できればシーズンの初めから、そのチームのいろいろなコンセプトを知ってプレーした方が、若い選手の成長度は高いかなと思ったんです。だから、『U-21 Jリーグ』も最初は二の足を踏むというか、ちょっと様子を見ようかと。
ただ、『U-21 Jリーグ』への参加表明をした今後は、徐々にレンタルで他チームに行くという形は少なくなっていくのではないかと思っています。とはいえ、一番重要なのは若い当該選手の成長なので、個人を良く加味した上で決定していきたいとも考えています。
実は今度日ハム(北海道日本ハムファイターズ)の方とお会いしようと思うんですけど、彼らはいろいろなことをやっているんです。高卒で入ってきた選手に対して数年計画を立てて、『1年目にここまでやる、2年目にここまでやる』という形で育てることで強くなってきたんです。だから、高卒3年目で活躍する選手が多いらしいんですよね。
要はピラミッドじゃないですけど、1軍があって、2軍があって、その下に育成があると。近々日ハムの方にお会いして、どういう形で選手育成に取り組んでいるかをお聞きしようと思っています。
やはり僕は現状を打破していかないと、エスパルスの将来はないと思っているんです。だから、トップでも十分指揮を執れて、若い選手に向き合える監督をU-23のカテゴリーの監督に抜擢して、そこで選手をどんどん鍛えて、ユースの選手もどんどん呼んで、16歳、17歳の選手も『U-21 Jリーグ』でさらに鍛えて、どんどん上に輩出していきたいんですよ」
「U-21 Jリーグ」で起き得る事態に対する危惧
――実際に最初はU-23のカテゴリーに振り分けられた選手も、力があればどんどんトップに入っていけるわけですよね?
「その通りです。実際にもう(嶋本)悠大は、18歳でもトップで出ているじゃないですか。だから、1つの好例として、最初はU-23のカテゴリーにいた選手が、そこからトップで活躍していけば、みんな認めるようになるでしょう。
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Profile
土屋 雅史
1979年8月18日生まれ。群馬県出身。群馬県立高崎高校3年時には全国総体でベスト8に入り、大会優秀選手に選出。2003年に株式会社ジェイ・スカイ・スポーツ(現ジェイ・スポーツ)へ入社。学生時代からヘビーな視聴者だった「Foot!」ではAD、ディレクター、プロデューサーとすべてを経験。2021年からフリーランスとして活動中。昔は現場、TV中継含めて年間1000試合ぐらい見ていたこともありました。サッカー大好き!
