FEATURE

クラブ史上初となる5季目の指揮でJ1首位争いに参戦!京都サンガF.C.で曺貴裁監督が徹底する「毎日×毎日」

2025.06.24

2025Jリーグ前半戦のサプライズ監督#4
曺貴裁監督(京都サンガF.C.)

2025シーズンのJリーグも折り返し地点を迎えた。前評判通りにいかない激動のシーズンとなっているが、その立役者とも言える「サプライズ監督=ポジティブな驚きを与えてくれた監督」たちをフォーカス。チーム作りの背景にある哲学やマネージメントについて掘り下げてみたい。

第4回は、前半戦を暫定2位で駆け抜け、J1優勝争いに堂々と参戦中の京都サンガF.C.を率いる曺貴裁監督。クラブ史上初となる5季目の指揮を執り、チームに一体感と躍動感をもたらしてきた情熱の人を、サンガの伴奏者として知られる京都新聞の逸見祐介が、思い入れ十分に綴り尽くす。

今季のJ1の躍進チームといえばサンガでしょう!

 ちょっと焼き餅を焼いている。今季のJ1で躍進チームといえば、京都サンガF.C.だろう。日ごろ取材している贔屓目も多少ありつつ、昇降格を繰り返す”エレベータークラブ“と揶揄された過去を踏まえれば、クラブ史上初の首位や暫定ながら2位での折り返しは、快進撃に違いない。でも、さまざまなメディアで前半戦の総括を見ると、よくスポットが当たっているのは、クラブカラーが黄色のあのチーム。もやもやしませんか。そんな思いを曺貴裁監督にぶつけてみた。

 「ははっ」と笑って指揮官は続けた。「パス数が上がって、ポゼッションが上がって、というのは表現しやすいよね。うちは見えないところにヒントがあるチーム。見えているところだけを整理している訳じゃない。それが一番の強みというか、『何か強いな』と思わせるヒントは試合の中にたくさんあるけど、決して言葉だけでは語り尽くせないものがある」。その行間には、揺るがぬ自信がにじんでいた。

 今年1月の新体制発表会。サンガ史上最長となる4季連続のJ1に向けて、曺監督は「いろいろなものをリニューアルして臨まないと目標には到達できない」と言った。抜本的な改革があるのか。真意を尋ねると、「別に家の見栄えを良くするということではなくて、『その窓、水漏れしないの』とか『その屋根、大丈夫なの』と点検しながらやることもリニューアル」と独特な表現で返ってきた。

 加えて、「いろんな枝葉をつけていこうとは思っていない。やっぱり自分たちで幹をさらに強くする中で自然に枝葉が出てくる」とも。幹とは磨き上げたハイライン、ハイプレスで敵陣に人数を掛け、ハードワークでボールを奪うスタイル。つまりは、より細部にこだわって持ち味を際立たせることでプレーの質と幅が向上する、と解釈した。そして、それを体現するシーズンになっている。

着々と進んだ指揮官の“リニューアル”

 1月の沖縄キャンプでは、相手の最終ラインの背後を「S(スコアリング)ゾーン」、ボランチと最終ラインの間を「P(パワー)ゾーン」と名付け、両ゾーンへボールを運ぶ意識を共有した。絶対的な3トップだったラファエル・エリアス、原大智、マルコ・トゥーリオを負傷で欠いても、出番を得た選手がチームの共通理解の下にゴールを積み上げ、前半戦を終えてリーグトップタイの30ゴール。シュート決定率はリーグ3位と飛躍的に向上した。

 指揮官の“リニューアル”は開幕後も着々と進む。3季連続主将を務めるMF川崎颯太は「細かい技術や戦術の指摘が増えた。以前なら前にチャレンジすることを認めるのが主だったけど、今はただ前にチャレンジするだけじゃなくて、一回横パスを入れてから(縦パスを)差し込むとか、一回持ち運んでから差し込むとか、より求められることが具体的になった」と明かす。

……

残り:2,753文字/全文:4,229文字 この記事の続きは
footballista MEMBERSHIP
に会員登録すると
お読みいただけます

Profile

逸見 祐介(京都新聞社)

1985年、新潟県生まれ。同志社大学卒。2008年に京都新聞社に入社。事件・事故や教育、紙面レイアウト、司法などの担当を経て2022年から運動部に所属。翌2023年シーズンから京都サンガF.C.担当としてホーム&アウェイの全試合を現地で取材する。朝刊紙面や自社サイトに掲載する月一特集ページ「マンスリーSANGA」などを執筆している。

RANKING