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J1でも「This is football」を表現中!秋葉忠宏監督が清水で信頼と共感を集めている理由

2025.06.26

2025Jリーグ前半戦のサプライズ監督#5
秋葉忠宏監督(清水エスパルス)

2025シーズンのJリーグも折り返し地点を迎えた。前評判通りにいかない激動のシーズンとなっているが、その立役者とも言える「サプライズ監督=ポジティブな驚きを与えてくれた監督」たちをフォーカス。チーム作りの背景にある哲学やマネージメントについて掘り下げてみたい。

第5回で取り上げるのは、J1昇格組の清水エスパルスを前半戦9位に導き、「This is football」を表現している在任3年目の秋葉忠宏監督。「サッカー王国・静岡」で信頼と共感を集めている理由とは?

 今季3年ぶりにJ1に復帰し、「トップ10以内」を目標にスタートした清水エスパルス。開幕2連勝で首位に立ち、4節まで負けなしと昇格組としては最高のスタートを切った。その後は2連敗が3度あったが3連敗はなく、ケガ人続出で苦しい時期も乗り越えて、前半戦を終えた時点で7勝4分8敗の9位と、目標順位内を保ちながら地歩を固めている。

 そんな好スタートに導いたのが、2023年4月に就任し、2年目の昨季はJ2優勝&J1昇格に導いた秋葉忠宏監督。指揮官としてはJ1初挑戦ながら手応えのある戦いができている理由について、次のように語る。

 「J2を戦う中でも常にJ1仕様のフットボールをやろうと言い続けてきたので、良い形で入れたというのはあると思います。あと、うちに限らず下のカテゴリーで優勝して勢いを持って上がってきたチームは、昇格早々から結果を出せるという例は多いですよね。それは、勝ちグセがついているというか、チームとして勝ち方を覚えたからというのはあると思います」

 「うちでいえば、90分間をどうマネージメントするかとか、我慢強く自分たちが崩れないという話をずっと言い続けてきました。自分たちが崩れなければ、相手がどこかで隙を見せたりする。そうやって勝つという成功体験を重ねていくと、こうすれば勝てるんだ、ご褒美が待ってるんだというのがわかるし、より我慢も効くようになります。それを選手たちが学びながら(昨季はJ2で最多の)26勝を積み上げたのは、1つ大きな自信になったと思います」

秋葉監督

 その言葉通り、J1でも開幕戦から選手たちは臆することなく堂々とした立ち振る舞いで臨み、冷静に試合を運んで因縁の相手である東京ヴェルディに1-0で勝利した姿は、非常に頼もしく感じられた。

昇格POの悲劇を糧に…「凡事徹底」で積み上げた自信

 一昨年(2023年)のJ2では、最終節で勝てば自力で自動昇格というチャンスを逃して4位に落ち、プレーオフでは決勝まで進んで東京Vと対戦。後半アディショナルタイムまで1-0でリードして指先まで昇格に手が届きかけていた。だが、土壇場でまさかのPKを与えてしまい、1-1に追いつかれて3位の東京Vに昇格を譲るという悲劇的な結末を突きつけられる。

 その悔しさと反省を踏まえて、昨年は始動時から秋葉監督が「勝負強さ」に強くこだわり、日常の練習だけでなくピッチ外での振る舞いに関しても「凡事徹底」(平凡なこと、当たり前のことを徹底して行なうこと)をチームに浸透させていった。

 例えばロッカールームの片づけや掃除を選手たちが自主的に行なうことを求め、練習中のランメニューでは最後のラインまで全力で走りきること、コーナーでショートカットしないことにも強くこだわった。もちろん1本のパス、1回のデュエルなどでも安易なミスを許さず、細かいところまで手を抜かない、緩みを作らない緊張感をチーム内に徹底させていく。

 それがどれだけ影響したのかを数値化することはできないが、昨年の清水は隙を見せないこと、我慢強さが増したことが結果にもつながっていたのは明らかだった。それによって勝利を重ねていくことで勝ち方を覚え、自信を積み上げていった。

 そして今季は、序盤で結果を出せたことによって、自分たちの戦い方はJ1でも通用するという自信を確信に近づけることができた。それが12節・横浜F・マリノス戦での0-2からの逆転勝ちや、18節でヴィッセル神戸との打ち合いを3-2で制したことにもつながっている。

「肝になるポジション」ボランチの充実に反映された意向

 もちろん、J1に上がって進化させた部分もある。秋葉監督のチームマネージメントの変化について、CBの高橋祐治に聞いた。

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