リカルド・スタイルにフィットした現代型守護神。柏レイソル・小島亨介がチームにもたらす圧倒的安定感と高い競争意識

輝く新戦力の理由#5
小島亨介(柏レイソル)
2月に開幕した2025シーズンも約2カ月が終わり、新たな勢力図が見えてきつつあるJリーグ。各Jクラブの浮沈に影響を与えているのは、新加入選手たちのパフォーマンスだろう。大卒ルーキーからベテランまで輝きを放つ新戦力にスポットライトを当て、その理由を掘り下げてみたい。
第5回は、プロ2年目から5シーズンを過ごしたアルビレックス新潟を後にし、柏レイソルへと新天地を求めた小島亨介。リカルド・ロドリゲス新監督の元で躍進を遂げるチームにおいて、この人の攻守にわたる貢献度は測り知れない。
「新たなチャレンジ」として選んだ新天地は柏レイソル!
今季、柏レイソルには大卒ルーキーを除いて10名の新戦力が加わった。その全員が、リカルド・ロドリゲス監督が獲得を熱望した選手であり、彼らもまた「リカルド監督のもとでサッカーをやりたい」、あるいは思い描くクラブのビジョンに「共感した」との理由で、柏に新天地を求めた。
昨季は17位と残留争いを強いられた柏だったが、今季は志向するスタイルを含めて劇的に生まれ変わった。新戦力の選手たちは開幕から額面どおりの活躍を見せ、早くも“リカルド・スタイル”を高いレベルで表現している。
「新たなチャレンジ」と成長を期して柏移籍を選択した小島亨介も、その一人だ。
「長いリーチを活かしたシュートストップと、後方でプラスワンを作ってチームの攻撃に良い影響を与えられる」
これは今シーズンのチーム始動時に、自身のストロングポイントを聞いた際の小島のコメントだ。
昨季までのアルビレックス新潟との対戦では、再三にわたってシュートを食い止められた。前からプレスに行こうにも、足元の技術の高さゆえに簡単に剥がされ、逆にその食いつきが仇となって、新潟にビルドアップの入り口を作られていた。
1シーズンにわずか二度の対戦だけでも、小島の実力は十分に窺い知ることができていた。
卓越した戦術眼と言語化能力。質の高いコーチングも兼ね備える
井上敬太GKコーチに、小島のプレーの印象を聞いた。
「落ち着いていますね。攻撃のところは皆さんご存知だと思いますが、いろいろなスペースを見つけたり、フリーの人を見つけたり、どうやったら前に運んでいくかというのを、チームのやり方や対戦相手の戦い方に合わせて、自分の持っているものを出せる。守備のところは穴がなく、シュートストップ、1対1、クロス対応も、トータルで高いレベルを発揮できる選手です」
ここで着目したいのは、井上コーチの「いろいろなスペースを見つけたり、フリーの人を見つけたり、どうやったら前に運んでいくかというのを、チームのやり方や対戦相手の戦い方に合わせて、自分の持っているものを出せる」という言葉である。
リーチの長さを活かしたシュートストップ、反応の鋭さ、足元の技術といった目に見えたものだけではなく、戦術眼や言語化能力の高さもまた、小島の特長と言っていいだろう。
例えば今年1月の指宿キャンプ。まだ新チーム立ち上げから数日しか経っていない状況にもかかわらず、小島はリカルド監督から求められること、チームで与えられるGKのタスクを、こと細かく説明してくれた。……



Profile
鈴木 潤
2002年のフリーライター転身後、03年から柏レイソルと国内育成年代の取材を開始。サッカー専門誌を中心に寄稿する傍ら、現在は柏レイソルのオフィシャル刊行物の執筆も手がける。14年には自身の責任編集によるウェブマガジン『柏フットボールジャーナル』を立ち上げ、日々の取材で得た情報を発信中。酒井宏樹選手の著書『リセットする力』(KADOKAWA)編集協力。