
輝く新戦力の理由#6
松本泰志(浦和レッズ)
2月に開幕した2025シーズンも約2カ月が終わり、新たな勢力図が見えてきつつあるJリーグ。各Jクラブの浮沈に影響を与えているのは、新加入選手たちのパフォーマンスだろう。大卒ルーキーからベテランまで輝きを放つ新戦力にスポットライトを当て、その理由を掘り下げてみたい。
第6回は、プロ入り後の8年間を過ごしたサンフレッチェ広島を離れ、浦和レッズに新天地を求めた松本泰志。地元出身の即戦力として期待を寄せられながら、加入後は9試合連続で先発してチームの穴を埋めるべく奔走してきたもののポジションが定まらず、連勝街道に乗り始めた直近2試合では途中出場に終わっている。トップ下かボランチか。岐路を迎えた松本の行方に、番記者のジェイこと沖永雄一郎氏が迫る。
特集タイトル通り、松本泰志は2025シーズンの『輝く新戦力』として鮮烈なデビューを果たした。しかし浦和レッズはJ1開幕節のヴィッセル神戸戦こそ手応えを得たものの、スタートダッシュに失敗。チームも松本も苦悩しながら解を探してきた。
そして今季の初の連勝を果たし、ようやく上向いてきたここ2試合、スターティングイレブンに松本の名はなかった。徐々にメンバーが入れ替わりつつ、現状の最適解かという構成に落ち着いた浦和において、松本が再び輝く日はやってくるのか検証してみたい。
沖縄キャンプで結果を残してプロ初挑戦の「10番」に固定
松本の浦和加入が発表されたのは、昨年12月30日のこと。2024シーズンのJ1における優秀選手賞受賞選手にして2位・サンフレッチェ広島の主力。しかも出身が埼玉県(東松山市)とあって、ファン・サポーターは色めき立った。まず話題の焦点となったのは、起用ポジション。昨季の広島でのスタメン32試合のうち、およそ3分の2をボランチ、3分の1をシャドーとしてプレーしていた。
今年1月12日から始まった沖縄キャンプでは、ボランチからスタートしつつトップ下も両にらみといった様相。ゲーム形式のメニューでは半々ずつのプレータイムで、前線ではCFチアゴ・サンタナと組むことが多かった。
「出ていく距離は広島の時より少し遠くなりますけど、運動量が持ち味なので出ていけるかなと思います。監督からは『10番でも試す』と言われていますので、練習試合でプレーすると思います」(1月14日)
「2列目だとスプリントの距離が短いので抜けやすい部分もありますけど、3列目から抜けるとなると考えながらだったり、サイドハーフとのコミュニケーションやアイコンタクトで(裏を)取れるか取れないかの判断が変わってくるので、3列目からの方が難しくなりますけど、よりチャンスになるかなと思います」(1月20日)
結局、キャンプ中に行われた5試合の練習試合のうち最初の3試合はボランチで起用され、練習ではさすがの動きを見せつつも、実戦ではそれほど目立てていなかったかもしれない。しかし4試合目のガンバ大阪戦でついに結果を残す。この一戦ではトップ下で先発し、2本目の32分に原口元気のラストパスを受けて得点。その直後の交代にともないボランチへ移動すると、43分に石原広教のフィードへ飛び込む。自身の代名詞とも言えるランニングでゴールを陥れた。
Taishi’s goals!
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— 浦和レッズオフィシャル (@REDSOFFICIAL) January 28, 2025
以降は松本のポジションも固定され、最後の練習試合もトップ下で出場。この時の1本目のメンバーがそのまま開幕戦のスタメンとなり、前年王者・神戸相手にチームも松本も躍動した。ただ、極めて珍しいオフサイド事案が発生してゴールが取り消しとなり、その当事者となる不運に見舞われてしまう。試合も0-0の引き分けに終わり、これが予兆だったのか、その後しばらく浦和のサッカーはうまくいかなくなる。……



Profile
ジェイ
1980年生まれ、山口県出身。2019年10月よりアイキャンフライしてフリーランスという名の無職となるが、気が付けばサッカー新聞『エル・ゴラッソ』浦和担当に。footballistaには2018年6月より不定期寄稿。心のクラブはレノファ山口、リーズ・ユナイテッド、アイルランド代表。