FEATURE

J2に帰還したチームが掲げるのは「1年でのJ1昇格」。変革元年を迎えたRB大宮アルディージャが軸に据える継続と変化

2025.02.12

2025注目Jクラブキャンプレポート#10
RB大宮アルディージャ

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第10回は、巨大飲料メーカー・レッドブルの買収を受けて、一躍注目クラブへと躍り出たRB大宮アルディージャ。シビアなJ3の戦いを1年で潜り抜け、J2へと帰ってきた注目チームは明確に「J1昇格」を掲げて、2025シーズンの戦いへと歩みを進めていく。そんなクラブの伴奏者・土地将靖がアルディージャの今をレポートする。

華やかな新体制発表会。ユニフォームにも現れる変革の予感

 ワールドワイドな巨大飲料メーカー、レッドブルに買収されたRB大宮アルディージャ。ヨーロッパはもとより、ブラジル、アメリカにもサッカークラブを持つグローバルなグループの一員となった大宮は、J3を圧倒的な成績で制し1年でJ2復帰を果たしたことも相まって、一躍日本中の耳目を集めるサッカークラブとなった。

 開幕前に行なわれたキックオフイベントは、およそサッカークラブの新体制発表会とは一線を画すもの。ダンスイベントのような雰囲気に、訪れたメディア、サポーターは皆、度肝を抜かれたのではないか。その場で発表されたユニフォームも、前年のオレンジを基調としたものからネイビーベースに大きく転換。まさに変革を感じさせるものとなった。

 チームのサポート体制にも充実を図る。長澤徹監督とFC東京ではコーチと選手、ファジアーノ岡山では監督とコーチと、立場を変えながらも共に仕事をしてきた戸田光洋コーチが新たに就任。長澤監督は「選手とコミュニケーションを取るのが上手」と、潤滑油的な役割も含め期待を寄せる。さらに、テクニカルスタッフやマネージャーも増員された。

 チームを支える強化部門に目を向ければ、菊地光将氏がスカウトとして2019年以来6年ぶりに大宮に復帰。ヘッドオブアナリストとして片桐央視氏が就任するなど、発表された人員は原博実代表取締役社長兼ヘッドオブスポーツ以下7名となった。もちろん、ただ数が増えればいいというものではないが、一時は3~4名というギリギリの体制で回していたことを考えれば、隔世の感がある。

 そして選手補強。資金力に任せてビッグネームを揃える、といった派手さこそないが、「技術、特長、そして勝負強さを持つ選手を、レッドブルのスカウトと一緒にリストアップ」(山本佳津スポーツダイレクター)、“名より実”といった印象で底上げし、選手層全体の厚みを増した。

 「レッドブルはしっかりサポートしてくれている。環境やいろんな部分を整備してくれて、選手はもう言い訳できない」。トータルで一回り大きくなったチームに、長澤監督はそう感謝の思いを表する。キックオフイベントでは「すべての試合で襲いかかります」と宣言。1年でのJ1昇格を目指すべく、準備期間に入った。

キャンプで窺えたのは昨シーズンをベースにした「継続」と「深化」

 変革のシーズンとは言いつつも、練習で大きな変化が起きているわけではない、と選手たちは口々に言う。村上陽介は「やっぱりエンブレムじゃないですか」とおどけた後に、こう続けた。……

Profile

土地 将靖

1967年埼玉県生まれ。1993年のJリーグ開幕と同時に試合速報サービスのレポーター兼ライターとして業界入り。2001年よりフリーに転身し大宮アルディージャに密着、各種媒体への寄稿を細々と続けている。2005年より続いていた大宮全公式戦の現地直接取材はコロナ禍で途絶えたが、近年は下部組織の取材にも注力し、精力的に活動している。