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パパス新監督が軸に据えるのはブレない哲学。セレッソ大阪が挑むアタッキングフットボールへの原点回帰

2025.02.10

2025注目Jクラブキャンプレポート#9
セレッソ大阪

新体制発表会、新チーム始動、そしてキャンプと各Jクラブが2025シーズン開幕に向けた準備を進めている。1年間を駆け抜ける体の土台、戦術の基礎を築く集中期間だが、その実態はなかなか見えてこない。そこで密着取材している番記者たちに昨季の課題を踏まえた取り組み、今季のサッカースタイルや新加入選手の現状など、注目クラブの最新情報をレポートしてもらおう。

第9回は、クラブ在籍27年の小菊昭雄監督体制に終止符を打ち、横浜F・マリノスでヘッドコーチを務めた経験を持つアーサー・パパス監督を新指揮官に招聘したセレッソ大阪。掲げるアタッキングフットボールにマッチした選手補強を推し進め、改めて攻撃的なスタイルへの原点回帰を目指すチームの今を、小田尚史があぶり出す。

絵馬に込められたそれぞれの想い。繰り広げられるホットな競争

 最強寒波が日本列島を襲った2月5日。セレッソ大阪は、大阪市住吉区にある住吉大社にて、今シーズンの必勝祈願を行った。

 今季から桜の指揮官に就任したアーサー・パパス監督は、「美しいセレモニーでした。日本の文化を尊敬していますし、感慨深い気持ちになりました」と振り返り、「目標には上限がない。一歩一歩、自分たちが目指すサッカーのスタイルを確立し、成功へ向けて進んでいきたい」と新シーズンへ向けた抱負を語った。

 選手もそれぞれの想いを絵馬に記入。香川真司は「成長」と記し、込めた想いについて、「この年になっても貪欲に成長し続けたい。そのために何をすればいいのか、自分なりに考えて、変化しながら上を目指していきたい。技術もメンタリティーもトレーニングも、色んなところで成長し続けないと、競争に打ち勝っていけない」と話した。

 プロ4年目の今シーズン、満を持してJ1でのブレイクを期す北野颯太が書き込んだ文字は「結果」。ゴールやアシストといった「今年は数字にこだわる」姿勢を改めて明確にした。

 必勝祈願の後、チームはクラブハウスがある大阪市此花区の人工島・舞洲に移動し、小雪舞う中、約1時間半のトレーニングを行った。「毎日、選手たちが全てを出し切ってくれることを期待している中で、誰が上、誰が下、ということはない。練習で成果を出した選手を試合でも起用する。昨日は昨日、今日は今日、明日は明日。毎回、常に出し続ける選手がいい選手」と話すパパス監督の下、経験豊富な百戦錬磨から、新たな時代を作ろうとする期待のホープまで、今シーズンの開幕戦となる“大阪ダービー”へ向け、ホットな競争が繰り広げられている。

パパス監督が志向する攻撃サッカーにマッチしたメンバーが揃う!

 その約1ヶ月前。1月9日にヨドコウ桜スタジアムで行われた新体制発表会見には、森島寛晃代表取締役社長、パパス監督、新加入選手とともに、梶野智チーム統括部長も出席。「今シーズンは、セレッソ大阪の原点に戻り、攻撃に魅力あるサッカーを展開して、若手の育成にも注力しながらACL圏内を目指す」と宣言した。

 パパス監督を招聘した理由については、「攻撃サッカーを志向し、データを有効活用しながら指導するスタイル。面談した際に、攻撃サッカーのビジョンを熱く語っていただき、それをデータで示してくれた」ことが決め手になったと述べた。

 セレッソの昨季の課題として挙げられるのが、得点力。得点ランク2位となる21点を決めたレオ・セアラ(鹿島アントラーズ)がいたことで見過ごされがちだが、チーム全体での得点数は下から3番目の少なさだった。先制されると逆転できない反発力のなさも浮き彫りになった。

 そうした状況を打破すべく、クラブが白羽の矢を立てたのが、かつて横浜F・マリノスでヘッドコーチを務めた経験もあるパパス監督。「選手たちが持っている技術にアタッキングのメンタリティーを植え付けたい。ボールを持っていない時でもアグレッシブに戦い、攻撃的な戦い方を落とし込みたい」と自身の哲学を語る指揮官とフロントの思惑が一致して、新体制誕生の運びとなった。……

Profile

小田 尚史

2009シーズンより、サッカー専門紙『EL GOLAZO』にてセレッソ大阪と徳島ヴォルティスを担当。2014シーズンより、セレッソ大阪専属となる。現在は、セレッソ大阪のオフィシャルライターとしてMDPなどでも執筆中。