FEATURE

栃木でついに安定感を手にしたU-22日本代表のGK藤田和輝。今はまさに覚醒前夜。

2023.10.25

レンタル選手の現在地2023 #5
藤田和輝(アルビレックス新潟→栃木SC)

バル・フットボリスタでも取り上げた「ポストユース問題」。J1でプロ契約した高卒選手がその後どのように試合経験を重ねていくかは、日本サッカーの発展を考える上で大きな課題だ。J2やJ3への期限付き移籍はそれを解決する1つの手段だが、修行先でも厳しい戦いが待っている。試練を乗り越えて活躍する若手選手たちの「現在地」を徹底レポート。第5回は、アルビレックス新潟から栃木SCにレンタルされている藤田和輝を取り上げる。

徐々に安定感が出てくるとU-22日本代表に選出

 藤田和輝は今季、J2の39節終了時点で29試合に出場するなど栃木でキャリアハイを更新している。場数を踏むなかで、周囲から「安定感が出てきた」と声を掛けられるようにもなった。

 今月、中国の杭州で開催されたアジア大会のメンバーにも選出されると正GKとしてゴールマウスを守った。予選を突破し、順当に進んだ決勝ではオーバーエイジのイ・ガンインらを擁するU-24韓国代表と対峙し、これまでにないレベルを経験。一つ上のステージで戦うなかで得るものが大きな時間となった。

 「大会を通して安定してプレーできたこと、GKとしてチームに安定感をもたらせたことは良かったと思っています。ただ、決勝では決定的なセーブができなかった。もっと成長しないとチームを勝たせることはできない。それは代表でも栃木でも変わらないなと思いました」

Photo: ©TOCHIGI SC

 新潟時代からポテンシャルの塊だったが、若いGKらしく試合によってまだムラがあった。だが、今はその課題を徐々に克服しつつあり、一つ上のステージに手を掛けようとしている。

神懸ったセーブを連発した栃木SC戦が転機に

 新潟出身の藤田が新潟U-18からトップチームに昇格したのが19年。20年シーズンには守護神だった小島亨介のケガもあり、また当時の指揮官だったアルベル監督に見いだされるとその他のベテランGKを差し置き、試合出場を重ねたが、前述のとおり試合によって安定感を欠いた。

 翌21年に出場機会を失うと、周囲には「なんで俺じゃなくてあいつが試合に出ているんだよ」と愚痴巻き、先輩たちに窘められる時期を過ごしている。

 負けん気が強く、遠慮なく感情を顕わにするタイプ。心の揺れ動きをコントロールできず、それが試合中のパフォーマンスの高低に繋がっていると周りから指摘されることもしばしばだった。

 ただ、GKとして気持ちの強さは周囲の仲間たちからすれば頼もしさにも繋がる。試合によっては神懸かったセーブを連発し、チームを救う。高い能力を秘めたGKであることは間違いなかった。問題は、それを安定して発揮できるか否か。

 新潟で第3GKといえる位置付けだった藤田が、当時、同カテゴリーの栃木に移籍するチャンスを手にしたのも、藤田自身が瞬間最大風速的な能力値の高さを見せつけたからだった。

 20年シーズンの9節栃木戦。新潟がボールを保持する展開のなか、栃木がボール奪取から何度もカウンターチャンスを掴んだが、最後の砦として藤田が栃木の前に仁王立ち、幾度となくピンチを防いだ試合があった。

藤田和輝がビッグセーブ連発で栃木SCを完封した2020シーズンのJ2第9節(0-0)のハイライト動画

 そのベストプレーが栃木の強化部の目に留まったことは言うまでもない。

 「ほとんど試合に出られていない自分に声をかけてもらったことは嬉しかった」

 藤田は当時から24年のパリ五輪出場を目標にしており、地元新潟で試合に出ることを一番の望みにしながら、試合に出なければ何も始まらないと同時に移籍も模索していた。

 そして自ら発揮したハイパフォーマンスによって垂れ下がったチャンスの糸を手繰り寄せ、新天地に身を委ねることになった。

齋藤誠一GKコーチとの二人三脚

……

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Profile

鈴木 康浩

1978年、栃木県生まれ。ライター・編集者。サッカー書籍の構成・編集は30作以上。松田浩氏との共著に『サッカー守備戦術の教科書 超ゾーンディフェンス論』がある。普段は『EL GOLAZO』やWEBマガジン『栃木フットボールマガジン』で栃木SCの日々の記録に明け暮れる。YouTubeのJ論ライブ『J2バスターズ』にも出演中。

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