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「指示を待つ人は、このクラブには向いていない」。コモに抜擢された日本人・遠藤翼が体感する、「変革を続ける組織」の思想

2026.10.13

【特集】セリエAを革新するコモのビジョン#4

セスク・ファブレガス監督がピッチ上に表現するプレー哲学と、コモ湖を背景に街をプロデュースする独自のブランド戦略。2024-25シーズンのセリエA昇格からわずか2年でCLに初参戦しているコモ1907は今、欧州サッカーで最もユニークな存在だ。イタリアのプロビンチャーレだったクラブがなぜ、この短期間で異彩を放ちつつあるのか。その答えは、目の前の試合結果だけを追うのではなく、先を見据えた未来から逆算してチームを作る「ビジョン」にある。人材獲得と育成、移籍戦略、トップチームの戦術――それぞれの取り組みは別々に見えて、実は一つの思想によってつながっている。その革新のDNAを読み解く。

第3&4回は、JFAアカデミー福島を経てMLSのトロントFC、Aリーグのメルボルン・シティなどの海外クラブを渡り歩いた後、昨季からコモのローンマネージャーに就任した遠藤翼のインタビュー前後編。コモで働く中で感じたのは、指示を待つのではなく、自ら考えて仕事を作り出していく組織文化だった。自身も他クラブのローンマネージャーから学び、様々な意見を取り入れながら新たな仕組みを構築している。そこには、選手として海外でプレーしたこと、異なる文化に適応してきた経験も生きている。ローンマネージャーとしての仕事、これからのキャリア、そして自ら動くことで切り拓いてきた現在地。遠藤がクラブ内部で体感している「プロアクティブに働く」というクラブの組織文化に迫る。

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「dead time/alive time」を体現するクラブ

――遠藤さんは今まで選手としてMLSのトロントFC、Aリーグのメルボルン・シティ、USLチャンピオンシップのロサンゼルス・ギャラクシーⅡなど、いろいろな環境を経験されてきたと思うんですが、そういうクラブと比較した時にコモというクラブはどのように見えているんでしょう。

 「トロントやメルボルンは選手として所属してきたので、バックサイドで何をしているかはあまり気にしないし、やっぱり自分でプレーすることとか練習とか、そっちに集中していましたし、それが普通だと思います。選手は自分がほとんどなんですよ。でも僕も、コロナですべてが止まった時に、将来何がしたいかっていうのはすごく自問自答して、でも監督じゃないな、フロントの方だな、でもスカウトなのかな、とか。その時点では自分は何がやりたいのかを探っている段階でした。

 今こういう急激な成長を遂げているクラブに入って思うのは、国によって働き方も違うし、このクラブはすごくユニークだということです。仕事をする時にも、許可を得たりとか、レポートをどんな内容にするかを、スポーツダイレクター(SD)がいわゆるボスなので彼にいろいろ聞いたりはするんですが、結局は全部自分で決めて自分でやることになります。このローンマネージングデパートメントは僕だけなので。

 だから、自分でスケジュールして、自分で積極的に動いて、ということをしないと、周りからは何も言われない。そういう意味ではプロアクティブ(能動的)な行動性はすごく大事です。僕が好きな言葉に『dead time/alive time』というのがあるんですが、dead timeは自分が受け身になって全部指示を待っている状態、alive timeは自分で積極的に何が必要か考えて行動している状態ですね。そうあることがすごく大事だと思っていて。コモはみんなすごく積極的なんですよ」

――コモは特に独自のコンセプトを持つクラブですからね。

 「やっぱりああいう会長がいるっていうのが大きいと思います。すごくクリエイティブな人で、コミュニティをすごく大事にして、インドネシア人でアメリカの大学出身というボーダーレスなバックグラウンドがある。クラブの中で彼のアイディアがみんなに共有されて、自分のデパートメントでいろんなことを積極的にやっていくし、その中で成長していく。ただいろいろな人がいるので、切られていく人もいるのが現実です。このクラブの中では自分でいろいろな考えを持って行動していかないと遅れを取ってしまいます。ですから、自分でアクティブに何かを作り出していく姿勢がない人は、この中にいるとだんだん置いていかれてしまう。これをやってください、これを作ってください、という指示を待っているような人は、このクラブには向いていないと思います」

「長期的なプロジェクトはチームで」。自由と責任がセットの組織

――毎週のレポートをステークホルダーに出すというのも、遠藤さんが考えて、自分の仕事として作り出してやっていると。

……

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Profile

片野 道郎

1962年仙台市生まれ。95年から北イタリア・アレッサンドリア在住。ジャーナリスト・翻訳家として、ピッチ上の出来事にとどまらず、その背後にある社会・経済・文化にまで視野を広げて、カルチョの魅力と奥深さをディープかつ多角的に伝えている。主な著書に『チャンピオンズリーグ・クロニクル』、『それでも世界はサッカーとともに回り続ける』『モウリーニョの流儀』。共著に『モダンサッカーの教科書』などがある。

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