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「クラブが使えるのは41週間しかない」。佐伯夕利子と考える「ポストW杯の世界」

2026.10.06

北中米W杯で世界一になったスペイン。その華々しい成功の裏側で、クラブが選手のコンディションを管理できる時間は、かつてないほど限られるようになった。W杯や代表活動、国内外の大会が増える一方で、選手には労働者としての休暇や休息、家族と過ごす時間も確保されなければならない。

スペインでは、21日間の連続休暇を含む年間30日の有給休暇が労働協約によって定められている。さらに、休暇明けにはトップレベルの競技に戻るための準備期間も必要になる。「12カ月ではなく11カ月」。ビジャレアルCFのフットボールマネジメント部に所属する佐伯夕利子が指摘するのは、クラブが選手のコンディションを管理できる時間そのものが縮小している現実だ。

「41週のフットボール」という視点から、W杯後のフットボール界で何が変わろうとしているのか。欧州の最前線とJリーグの事情の両方に通じる佐伯夕利子に聞いた。(敬称略)

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ラリーガ、異例の“時差開幕”はなぜ起きたのか

――W杯という4年に一度の華やかな1カ月が終わり、各国リーグが日々の現実に向かうシーズンが始まりました。

 「ラリーガはご存知のように開幕がクラブによって異なり、半分のクラブが(開幕節を)消化しない変則的な形で始まりました。発端は、選手会とラリーガの開幕日をめぐる仲裁でした。結論はラリーガ案の8月開幕でしたが、協約上の休暇と準備期間を確保できないクラブは、開幕をずらすしかなかったのです」

――夏に過密日程を消化した選手たちへの健康面の配慮、といったものですか?

 「W杯を含め過密日程を消化した選手たちにしっかり休んでもらいましょうね、といった柔らかなトーンの話ではありません。そもそも、選手会とラリーガが結んでいる労働協約の存在があり、それに従うと開幕には間に合わない。スペインではサッカー選手である前に、1人の労働者として当然のことながら30日の有給休暇が認められなくてはならないんです」

――労働者の権利は会社によって、とか、クラブの判断によって違うのではなくて全て同じに定められているのですね。

 「もちろんです。まずスペインの労働者であり、次にサッカー選手です。30日の有給のうち21日間は“連続で”完全オフを取らなくてはなりません。7月19日にW杯決勝を終え、帰国して行事を済ませて解散してから21日間の休みを取れば8月16日の開幕には到底間に合いませんよね」

――休暇明けは開幕直前……。

 「プレシーズンに必要な期間は、標準で4週間から6週間と言われています。実際に私たちビジャレアルでも、トップチームは6週間を目途に開幕までの準備を組み立てています。ですから、連続で21日の休暇を取った選手を、いきなり試合に復帰させるわけにはいかないんです。本来なら、21日の完全オフの後に6週間のプレシーズンが必要です。アトレティコ・マドリーからは過去最多とされる10名の選手がW杯決勝に進出しましたが、彼らは実質、1週間から10日の準備期間しかなかったことになります」

――アトレティコから(W杯決勝まで勝ち上がった)スペイン代表に4人、アルゼンチン代表に6人ですか。

 「どの国籍でもスペインでの労働者としての権利は保護されます。家族と過ごす大事な時間を決して奪ってはいけないので、スペインではクリスマスに仕事はできないのです。労働者の権利侵害になってしまいますから。こういう点が大切にされているのがスペインのリーグであり労働者の権利を守ろうとする概念です。私が以前、村井満チェアマンのもとで、Jリーグの常勤理事を務めた際(2022年まで)、日本のサッカーカレンダーについて、『日本における元日は家族と過ごす大切な日ですが、選手会やクラブ職員の労働組合などから、改善の要求はないのですか?』と、スペインの労働協約の考え方から質問したことがあります。でも関係者からは、『日本における元旦開催は、“風物詩”なんです』という説明を受けました」

「12カ月ではなく11カ月」。クラブの管理下にない代表活動という矛盾

――1年12カ月ではなく11カ月でクラブが選手のパフォーマンスをコントロールしなくてはならないのですね。

……

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Profile

増島 みどり

1961年生まれ、学習院大からスポーツ紙記者を経て97年独立しスポーツライターに。98年フランスW杯日本代表39人のインタビューをまとめた「6月の軌跡」(文芸春秋)でミズノスポーツライター賞受賞。「GK論」(講談社)、「中田英寿 IN HIS TIME」(光文社)、「名波浩 夢の中まで左足」(ベースボールマガジン社)等著作多数。フランス大会から20年の18年、「6月の軌跡」の39人へのインタビューを再度行い「日本代表を生きる」(文芸春秋)を書いた。1988年ソウル大会から夏冬の五輪、W杯など数十カ国で取材を経験する。法政大スポーツ健康学部客員講師、スポーツコンプライアンス教育振興機構副代表も務める。Jリーグ30年の2023年6月、「キャプテン」を出版した。

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