「欧州クラブの経営は我々の出発点」。出島フットボールが描く、日本と欧州をつなぐ“成長軌道”
この記事は『Deshima Football Consultancy B.V.』の提供でお届けします。
2025年4月、オランダ2部のMVVマーストリヒトの共同オーナーとなった出島フットボール。その歩みは、欧州クラブの経営だけにとどまらない。日本人選手の欧州挑戦、ビジネス人材の育成、国際ユース大会やビジネスカンファレンスの開催、大学との学術連携、そして日本企業による欧州クラブ買収のアドバイザリーまで、クラブ経営を起点に事業領域を広げている。2026年1月からBusiness Development Managerとして加わった有永敏之氏が、出島フットボールとの出会いから現在までを振り返り、その先にある「日本と欧州をつなぐ架け橋」を目指す目標までを、内側から描く。
出島フットボールとの出会い。なぜ、この仲間と歩むのか
筆者は新卒で三菱商事㈱に入社し、化学品・エネルギー商品を通じて売買取引、投資先運営、新規事業開発に携わってきた。したがって、スポーツ産業との実務的な関わりは皆無であったが、広島東洋カープの熱狂的なファンであったことから、スポーツビジネスや、それを通じた地域振興への興味を前々から持っていた。その思いを強くさせられた経験がある。何かの機会でJリーグが開示している「クラブ経営情報開示資料」を目にしたのだ。その情報量と統一性、しかも毎年継続して開示するという組織としてのコミットメントに、筆者は大きな衝撃を受けた。それ以来、Jリーグという組織のことを折に触れて意識するようになった。
昨年(2025年)まで三菱商事アブダビ駐在事務所に海外赴任していたが、今後、自らが新たに貢献できる舞台を考えていた。その1つがスポーツビジネスであり、その基礎を学ぶためにも、強い関心を寄せていたJリーグに起源を持つスポーツヒューマンキャピタル(SHC)のビジネスコースで学ぶことを決めた。その講義の1つに講演者として現れたのが、出島フットボールの利重孝夫と飯塚晃央だった。

2025年7月に聴講した出島フットボールの活動を紹介する内容は、SHCにおける一連の講義を通じて、筆者に一番のインパクトを残した。出島フットボールはMVVマーストリヒトの共同オーナーとなったが、その目的は単に欧州のプロクラブを保有・経営することではない。「日本のフットボール界に長年横たわる課題・問題を、自ら解決するために立ち上がった」――というのが、その出発点だった。
第一に、5大リーグへの登竜門となるオランダに、日本人選手が移籍できる日本資本参画クラブをつくり、日本の競技力向上に貢献すること。出島が“ファーストペンギン”として果実を寡占するのではなく、今後、日本資本が積極的に欧州へ進出するための呼び水・きっかけになることを目指す。
第二に、日本のクラブが日本人選手の欧州移籍で適切な移籍金収入を得られていないケースが多いとされる中(欧州移籍後のさらなるステップアップ時におけるセルオン条項なども含め)、ステップアップリーグに日本資本参画クラブが増えることで、欧州クラブと交渉しやすい環境、日本に移籍金が還流する仕組みを創る。
第三に、フットボールに限らず、日本のトップアスリートは世界の最先端・最高峰へ次々と上り詰めている一方、その基盤を担うはずのビジネス・経営人材は日本国内にとどまり、海外で活躍する機会が乏しい。出島は、そうしたビジネス人材にとっての「ステップアップ」の場となる。同時に、選手やビジネス人材に限らず、日本のフットボール界に関わる人々をつなぐ交流拠点・HUBとして、日本のあらゆるステークホルダーにとっての「ステップアップ」を生み出す。
クラブ経営が中心事業であることに間違いはない。一方で、出島フットボールには単純なクラブ経営の最適化にとどまらず、日本のフットボール界に貢献したいという純粋な思いを原点とするビジョンと、そこから派生する複数の戦略事業があった。出島フットボールの本質は「欧州クラブを経営すること」そのものではなく、クラブ経営を基盤として日本と欧州の間に、人材、知見、機会が行き交う「架け橋」を創ることにある、という点にある。

既存のクラブ・スポーツチームに足元で貢献できるスキルと知見を持たない筆者にとって、出島フットボールの取組み・事業こそが、これまでのビジネス知見や語学力などを活かし、直接的な貢献ができる舞台となるのではないか、と直感的に感じた。また、フットボールビジネスの経営実務を最短距離で学ぶ機会にもなる。
そこで、講演後すぐに筆者は利重のもとを訪ね、自分の思いを伝えると同時に、出島が描く戦略と、私自身が想定していた戦略とを重ね合わせた。その結果、出島フットボールで働く機会を得ることとなった。
MVVマーストリヒトを持続可能なクラブへ
ここからは、出島フットボールがこの1年の間に一つひとつのビジョンをどのように具現化してきたかを、ともに歩んできた筆者の視点から説明したい。前述した「競技力向上」「移籍金の還流」「ビジネス人材育成」「交流拠点・HUB」などの各ビジョンは、クラブ経営改善、選手・育成年代への機会提供、ビジネスカンファレンス、学術連携、そして外部クラブへのアドバイザリーという5つの具体的な取り組みに、少しずつ姿を変え、着実に前進している。
①MVVマーストリヒト経営改善
MVVマーストリヒトは、経営破綻を迎えたクラブの財務基盤を立て直し、経営を再建するところからのスタートだった。まずはしっかりと稼ぐ力をつけ、その上で長期的な視点からユース・若手育成に取り組む――その積み重ねの先に、2部からの昇格争いが見えてくると考えている。そのためには短期的な順位だけを追うのではなく、長期的な目線でクラブの基盤をつくることが出発点となる。
昨シーズンは、経営面でも競技面でも改革は緒に就いたばかりで、リーグ19位に沈んだ。一方、オランダサッカー界のレジェンドの1人であるアンドリース・ヨンカーを監督に迎えた今シーズンは、明らかにチームに規律がもたらされ、攻撃的なプレッシングで90分を戦い抜くスタイルが明確となった。負ける試合では大量失点を食らうリスクを負いながらも、迷いのなくなったチーム戦術は結果にも表れ、昇格プレーオフ圏内となる4位を走っている(26年10月6日現在)。
出島フットボールにとって、MVVマーストリヒトの経営力・競技力向上が一丁目一番地。まずは経営基盤を整え、しっかりとした成長軌道に乗せること。それを踏まえ、1部昇格、そして定着へとつなげていきたい。
MVV Maastricht Cupが生み出した、新たな「IP資産」
②遠征受入れ・国際ユース大会の開催
・Copa Blau Rojo遠征
2026年3月、出島フットボールが手がける遠征受入れ事業の最初の参加チームとなったのが、セレソン都城FCを中心に構成された宮崎県都城市の選抜チーム「Copa Blau Rojo」であった。Jリーグユースや強豪校ではなく、町クラブを中心としたチームだったことは、とても印象的だった。
遠征序盤は海外の雰囲気に圧倒され、練習試合では負けて悔しい思いもした。それでも、最後に臨んだ国際トーナメントでは唯一のアジア参加チームとして地元でも大きな注目を集め、準優勝まで成し遂げた。もっとも、この遠征で得たものはサッカーの結果だけではない。学術都市での生活、異文化の中で同世代の選手と交流すること、ちょっとした会話も英語を使うこと。その一つひとつが、参加した選手たちにとって大きな財産になったと思う。今後も、保護者の方々が安心してお子様を遠征に参加させられる環境をつくるべく、努力を重ねたい。
・国際ユース大会MVV Maastricht Cup開催と日本選抜チーム組成
2026年8月には、マーストリヒトで2日間にわたりMVV Maastricht Cupを開催し、17歳以下カテゴリーを対象とした国際ユース大会を主催した。ミズノ㈱と近畿日本ツーリスト㈱にスポンサーとなっていただき、有望選手を集めた日本選抜チームを組成して参加。欧州側からはスペインの強豪Villarreal CFを筆頭に、7チームが参加した。
日本選抜チームの名称は「Evolving NextGen(進化する次世代)」。名称案の1つとして筆者が提案したものをスポンサーにそのまま採用していただいた形となった。参加してくれる高校生世代の若者たちが、この経験を通じて、サッカーに留まらず一人の人間として自身の想像すら凌駕する成長を果たしてくれることを、その名前に託した。

興行面では大規模な大会施設を確保でき、2日目はMVVトップチームのホームスタジアムが舞台となった。2日間でおよそ1,500人が観戦に訪れ、参加各チームはもちろん、ドイツのFC Bayern Munchenなど近隣の強豪クラブからもスカウト陣が足を運んだ。実績のない第1回大会であったにもかかわらず、想像以上の手応えを得ることができた。


一方で、この大会をさらに良いものとするために、参加クラブからは改善点について多くのフィードバックとアドバイスをいただいた。ノート数ページに及ぶその内容は、まさに「宝の山」である。出島フットボールの中でしっかりと反芻し、次回以降に生かしたい。
メインスポンサーとなっていただいた2社とともに、この大会を「無形事業資産」「IP資産」として大切に育てていきたい。この大会は単なる競技イベントではない。日本の若手選手が欧州に触れる育成面での「ステップアップ」であると同時に、クラブ、スポンサー、指導者、スカウトなどが交差するHUBでもある。出島が掲げてきた複数のビジョンが、1つの事業の中で重なり始めた取り組みだと感じている。
競技だけではない。フットボールを軸にしたビジネスHUBへ
③ビジネスカンファレンス開催
2026年8月、MVV Maastricht Cupの開催に合わせて、マーストリヒトでビジネスカンファレンスを開催した。今回我々はあえて競技面から距離を置き、「ビジネス面」に焦点を当てることを目指した。テーマは「フットボール・ビジネス全般」「マーケット規模」「エコシステム・生態系」。選手だけでなく、経営者や現場スタッフ、ファン、スポンサー、企業、地域社会といったステークホルダーが、どのようにその生態系に関わっているのかを考える場とした。
参加者に「自分の会社・組織のビジネスにスポーツ産業を活用できるのではないか」「自身のセカンドキャリアに、直接的にも間接的にも生かせるのではないか」といった新しい視点を提供すること、そしてこの舞台自体が「交流拠点・HUB」として機能することを目指した。
今回のカンファレンスでは、大変ありがたく光栄なことに、Villarreal CFフットボールマネジメント部・佐伯夕利子氏と、Jリーグ パートナーシップ事業部長・竹田英司氏にご登壇いただいた。そこに弊社代表・利重が基調講演として加わり、筆者は当日の司会、パネルディスカッションのファシリテートを務めた。
佐伯氏にお話しいただいたテーマは、「ビジャレアルに学ぶ、『ビジネスパーソンの育てる技術』」。今の時代、日本のどの組織にとっても若手の教育は難しい課題だ。従来のやり方がそのまま通用するわけではなく、優し過ぎても「ホワイトハラスメント」などと揶揄される時代でもある。自由と創造性にあふれるスペインサッカー界の中でも、特に際立って有能な選手と指導者を輩出し続けるビジャレアルCF。その根幹にある考え方、組織論、人との向き合い方について講演いただいた。

竹田氏には「Jリーグの成長戦略と現在地、企業に期待すること」と題し、着実な成長を続けるJリーグの現在地と、今後のさらなる発展に向けた打ち手の数々をご紹介いただいた。欧州5大リーグの一角であるフランス・リーグ1に、Jリーグが観戦者数とリーグ全体売上の両面で肉薄している現在地と、さらなる成長に向けた打ち手の具体性は、非常に聞きごたえのある内容であった。

今後は講演者も聴衆も日本人に限定せず、スポーツビジネス界の第一線で活躍するビジネスパーソンを国籍・言語を問わず招いて、英語での開催を目指す。日本の最新トレンドや素晴らしさが欧州を中心とする海外へ伝わり、同時に欧州のトレンドへ日本側が容易にアクセスできる。そのような双方向のプラットフォームへ発展させていきたい。
北海道教育大学との学術連携。その先にある「実践」
④北海道教育大学との学術連携
2025年度から国立北海道教育大学スポーツ経営戦略室と学術連携プログラムを開始した。同室で教鞭を執られる福田准教授のもと、学生の皆さんにはオランダリーグ全体の動向を日々マクロ的観点から分析し、その研究成果を公表いただいている。これらはすべて、我々のHP「MVV Maastricht Football Hub」に掲載しており、詳細は「北海道教育大学との連携について」を参照いただきたい。
2年目となる本年度には、国際ユース大会とビジネスカンファレンスの公式SNS運用を、学生自らがチームを組んで実行してくれた。大会情報や魅力の発信、日本選抜チームのプロモーションについても学生が自ら企画立案。当初想定した以上のパフォーマンスを発揮し、我々の方が大きな刺激をいただくこととなった。同校との提携が研究の枠を越え、双方の活動の幅を広げることにつながったことは大きな収穫だった。
この学術連携の意味は、研究内容の素晴らしさだけに限定されない。将来の「ビジネス人材育成」事業であると同時に、貴重な研究成果が新たな産官学の関係者を惹きつけて「交流拠点・HUB」事業にもつながる。同大学の協力のもと、今後はこれまでのマクロ視点での分析に加え、マーケティング、チケッティングやSNS戦略など、AIも活用しながら、最新かつ実験的な取り組みに踏み込んでいきたい。研究成果を研究で終わらせず、実際のクラブ経営や事業運営への実践につなげることが大きな目標となる。
鈴与×ラナースFC。M&Aアドバイザリーへの事業拡張
⑤M&A、経営・競技面でのアドバイザリー業務
2026年8月29日、清水エスパルスの主要株主である鈴与㈱は、デンマークSuperliga所属Randers(ラナース)FCの経営権取得を発表した。本案件において出島フットボールは買主側投資アドバイザーとして参画し、案件の発掘から交渉、成約まで一連のM&Aプロセスを支援した(参考:鈴与㈱プレスリリース「デンマーク・スーパーリーガ所属クラブ「Randers FC」を 運営するRanders FC A/Sの株式80%を取得」)。
ラナースという6万人強の小規模都市を基盤としながら、ラナースFCは人口・予算規模以上のパフォーマンスを出してきた堅実な中堅クラブである。Jリーグの浦和・名古屋でプレーしたキャスパー・ユンカーはラナースFCの下部組織出身で、26年7月に古巣であるラナースFCに復帰した。また26年1月には、ラナースFCからノーマン・キャンベルがV・ファーレン長崎へ移籍しており、Jリーグ関係者にも聞き覚えのあるクラブだろう。
デンマークSuperligaの魅力は高く、外国資本からの投資も盛んである。若手の登竜門・ショーケースとして機能し、若い選手のプレー時間数は世界トップクラスで、日本人選手のステップアップの舞台としても相応しい。現日本代表の鈴木淳之介選手はFCコペンハーゲンに所属し、鈴木唯人選手も2025年までブレンビーに在籍した。また、欧州カップ戦への距離が近いことは、TV放映権収入のジャンプアップへの近さにも通じる。毎年のUEFAランキングに左右されるが、26-27シーズンで言えばCL予選1枠、EL予選1枠、ECL予選2枠。1部所属が12チームであることを考えれば、クラブ数に対して十分な欧州大会への挑戦枠が与えられており、資本家の観点からも投資効率が良く映る(参考:「なぜラナースFCは鈴与に買収されたのか?」)。
この案件には、出島フットボールにとってもう1つの意味がある。自らクラブを保有・経営するだけでなく、欧州フットボールの現場で蓄積してきた知見やネットワークを、第三者へのアドバイザリーという形で外部に提供する段階へ事業領域が広がったことである。
筆者はこのプロジェクトの中で、買主である鈴与側の立場に立ちながら、交渉・カウンターの準備や、個別合意内容の契約書への落とし込みを担った。前職で海外の新規事業開発や買収案件に携わった経験を、フットボールの世界で直接的に活かすことができる業務となった。一方、本プロジェクトは、買収対象が一般的な営利企業ではなく、公共性・地域性を有する「クラブ」であり、さらにクロスボーダー案件という難しさも加わった。筆者にとっても、新たな学びは多かった。
必ずしも利益を上げることだけを求められていないフットボールクラブでは、毎年の損益が収支トントン、あるいは赤字となることも多く、通常の営利企業の価値算定で用いるDCF法など、インカムベースの手法が機能しにくい。また、フットボールクラブのバランスシートには特有の複雑さがあり、選手の「市場価値」がそのままバランスシートに現れるわけではない。そこに計上されるのは未償却の移籍金(無形資産)程度。良い選手の売却が実現すれば現金・現金同等物が増加し、M&A実務上のクラブの金額的価値は上昇する一方、良い選手を放出することによる戦力低下は、財務上に表れない。企業価値と競技価値が必ずしも同じ方向に動かないことが、フットボールクラブの価値算定の難しさであることを実感させられた。このプロジェクトが合意に至ったのは、まさに欧州移籍期間の最終盤であり、我々はこの複雑さと正面から向き合うことになった。
そのような中で、歴史があり、競技面・経済面・公共性のすべてで価値の高いクラブを日本資本による買収につなげられたのは、我々にとっても誇らしい成果であるとともに、日本のクラブ関係者にとって大きなメッセージとなったのではないだろうか。日本資本の欧州参画は、ビッグクラブへの移籍金収入を日本側に還流させつつ、スカウティングの現場で具体的なキャリアアップを提示する最も有力な手段だからだ。
一方通行ではない、日本と欧州をつなぐ「架け橋」へ
最後に、オランダ2部を観戦・体験して感じることがある。それは、遠く離れた日本のJクラブ運営の素晴らしさと、その熱心さである。私は月に数度、対戦カードに縛られずJ1からJ3まで試合会場へ足を運ぶようになった。そのたびに驚かされるのが、Jクラブの運営の細やかさである。
J1からJ3までどのカテゴリーでも、女性や子どもが安心して観戦できる環境の整備、赤ちゃん連れ席や女性専用席、試合前の子ども向け・女性向けイベント、車いすを利用される方の観戦環境と安全な動線の確保など、さまざまな工夫が積み重ねられている。
一方、我々マーストリヒトの観戦環境はどうだろうか。週末開催にもかかわらず冬の寒い日に20時キックオフという時間設定であったり、女子トイレが極端に少なく、スタッフがその数すら把握していなかったり、スタジアム内外の治安に不安を禁じ得ない場面に出会うことがある。「試合こそがファンへの提供物」という考え方もあるだろうが、女性や子どもを意識したイベントはほとんど見られない。欧州の各地域・各クラブにとっては「Football as No.1」であり、他のスポーツ産業を競合相手として意識する必要がないのかもしれない。

Jリーグの運営・オペレーションは、実は非常に難易度の高いことを日々当たり前のように実現している。そしてそれは、海外クラブ側が学ぶべきことでもある。しかし、その価値に海外側がまだ気づいているとは限らない。だからこそ、発信していかなければならない。
出島フットボールが当初掲げた「ビジネス人材のステップアップ」という言葉を、筆者は当初、「日本人が欧州から学ぶ」という文脈で捉えていた。しかし、実際に欧州クラブの現場を見るにつれ、それほど一方向ではないと強く感じるし、日本のクラブ経営者やスタッフが海外クラブに挑戦すれば、活躍できる余地は大いにあると考えるようになった。もちろん、伝統や文化に加えて言語の壁が立ちはだかる。だが一番大きなハードルは、「海外クラブで自分のスキルと経験が通用するのだろうか?」という、自分自身の心の中にある壁かもしれない。出島フットボールが目指すべき役割の1つは、選手、ビジネス人材、資本、知識、クラブ経営のノウハウが、日本と欧州の間を双方向に行き交う「架け橋」となること。その橋を1人でも多くの方がいろんな思いを持って渡っていく世界を実現することが、我々が描く成長軌道である。
Profile
有永 敏之
1976年生まれ。三菱商事を2025年退職後、日本のフットボール界を本気で変革する利重孝夫・飯塚晃央の理念に共感し、出島フットボール(Deshima Football Consultancy BV)に加わる。Business Development Managerとして、日本側でフットボール事業開発に携わる。
