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ダビド・ラヤ、鈴木彩艶、ピアース・チャールズ。ロングボールの新極地、「低弾道フィード」の時代

2026.09.20

TACTICAL FRONTIER~進化型サッカー評論~#32

『ポジショナルプレーのすべて』の著者で、SNSでの独自ネットワークや英語文献を読み解くスキルでアカデミック化した欧州フットボールの進化を伝えてきた結城康平氏の雑誌連載が、WEBの月刊連載としてリニューアル。国籍・プロアマ問わず最先端の理論が共有されるボーダーレス化の先に待つ“戦術革命”にフォーカスし、複雑化した現代フットボールの新しい楽しみ方を提案する。

第32回のテーマは、「低弾道フィード」だ。ロングボールといえば、高いボールを前線に送り、空中戦で競り勝つというイメージが強い。しかし、プレッシングが高度化し、屈強なCBが中央を固める現代では、むしろ「低く、速く」ボールを届けることで相手の守備構造を攻略するパターンが生まれている。そこではGKも、単にビルドアップに参加する存在ではなく、敵陣へ直接ボールを送り込む戦術の起点となる。ダビド・ラヤ、鈴木彩艶、ピアース・チャールズらのキックを手がかりに、ロングボールの進化と、DFやGKに求められる新たな技術を考察する。

 スティーブン・ジェラードやポール・スコールズといったイングランドの名手たちは、鋭いフィードで局面を打開するようなパスを得意としていた。ボールを自在に操る南米のテクニシャンとは少し種類が違う「実用的なスキル」によって、彼らはプレミアリーグで活躍してきた。少しずつ司令塔のポジションが自チームのゴールに近づいていく傾向がある現代フットボールにおいて、フィードを求められるのはMFだけではない。今回はGKやDFにとっても重要な武器となりつつある「低弾道フィード」について考察していきたい。

空中戦から「走らせる」へ。ロングボールは“低く、速く”へ

 戦術的にはロングボール、特にシンプルな高さで勝負させるような「上空から落下するロングボール」に競り勝つことが難しくなったことで、少しずつロングボール戦術を見直す必要が出てきたことが1つの傾向だろう。

 多くのチームが屈強なCBを備えているプレミアリーグでは、マンチェスター・シティのホーランド(195cm)であってもシンプルな空中戦になってしまうと簡単には競り勝てない。その対応策として提示された1つが、空中戦の強い選手のウイング起用だろう。

 ユベントス時代のマッシミリアーノ・アレグリはマリオ・マンジュキッチの左サイド起用という奇策によって、サイドにロングボールの起点を作るというパターンで対面するSBを制圧した。サイドでミスマッチを作る戦術は脈々と受け継がれており、ノルウェー代表は北中米W杯でアレクサンデル・セルロートを右サイドに起用。彼らも中央に君臨するホーランドをターゲットにせず、別のポジションで質的優位を作り、そこを起点にするというアプローチで相手を苦しめた。

 同時に、シンプルに中央で空中戦を挑むCFは少しずつ絶滅危惧種となってきており、アーリング・ホーランドのようにスピードを兼ね備えた万能型が増えてきている。ヨーロッパに多くの選手を輸出するブラジルはトップリーグの需要を知り尽くしているが、実際にこういったタイプのブラジル人CFも増えてきている。ブレントフォードのイゴール・チアゴは運動量とサイドでの仕事を厭わない万能型であり、ノッティンガム・フォレストのイゴール・ジェズスは身長は高くないが、空中戦の競り合いに自信を持っている。9月1日時点での空中戦勝利数16回は、プレミアリーグでも首位だった。

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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