5月15日に発表された北中米W杯に臨む日本代表メンバーの中に、佐野航大の名前はなかった。NECナイメーヘンのエールディビジ3位躍進、クラブ史上初のCL出場権獲得を中盤から支えた佐野の落選に、現地で取材を続けてきた中田徹氏は何を思うのか?オランダメディア関係者の証言とともに、綴ってもらった。
得点王の上田以上?佐野は「オランダにおける最良の例」
佐野航大は今季、エールディビジで躍進したNECナイメーヘンの中心選手。[3-4-2-1]システムながら、ウイングバックではなくウイングを置くスタイルから、実質的なフォーメーションは[3-2-4-1]という超攻撃システムを採用するNECのセントラルMFとして、佐野は攻守に多彩なプレーを披露した。
その技術は優雅。しかし守備は激しく、運動量も多い。
「佐野はまるでエドガー・ダービッツのようだな」
「いや、佐野のほうが技術は高いよ」
そんな会話をNECのサポーターとしたものだ。
ファジアーノ岡山からNECに移籍したのは3年前。2年目の昨季はNECの最優秀タレント賞をGKロビン・ルーフス(現サンダーランド)と争い、見事に受賞。3年目になると夏の市場ではPSVが、冬の市場ではアヤックスが獲得に乗り出すほど、佐野はオランダリーグを代表するMFになった。だから5月15日、北中米W杯に参加する日本代表のメンバーが発表されると、オランダメディアは仰天した。
「W杯、オランダの対戦相手である日本代表に佐野航大は入らず。エールディビジから5人が選出」(『デ・テレフラーフ』)
「日本代表に小川選出、佐野落選。『日本のMFの質は高い』(スフローダー監督/NEC)」(『フットボール・インターナショナル』)
その1週間前、『デ・フォルクスクラント』紙のバルト・フリーストラ記者に6月14日のW杯初戦、日本対オランダを占ってもらったところ、こんな回答が届いた。
「オランダがポゼッションで主導権を握り、日本は様子を見る立ち上がり。右SB(デンゼル・)ドゥムフリースの得点でオランダが先制するんだ。ビハインドを負い失うものがなくなった日本が怒涛の反撃に出て、上田綺世と佐野航大のゴールで逆転した。しかし1点リードしたことで日本に攻めるか、守るか、迷いが生じ、オランダがそこを突く。後半アディショナルタイム、最後のCKからナタン・アケが劇的弾を決めて2-2で引き分けに終わる。こうしてグループFの本命2チームは仲良く勝ち点1を分け合った」
この予想を読むと、フリーストラ記者が佐野の選出を信じて疑わなかったことが伝わってくる。
『フットボール・インターナショナル』誌のシモン・ズワルトクライス記者は、エールディビジでプレーする日本人選手について、こう語っていた。
「日本人選手は単なる『献身的なチームプレーヤー』であるだけでなく、『個の力でチームに大きな価値を加えられる』という自覚が生まれています。多くのゴールを決めた上田綺世選手も目立ちましたが、オランダにおける最良の例は佐野航大でしょう。彼はNECの素晴らしいシーズンにおいて、中心的な役割を果たし、試合を支配していました 」
つまり25ゴールで得点王に輝いた上田より、3ゴール7アシストの佐野のほうが活躍度は上とズワルトクライス記者は見立てているのだ。
「どんな時でも100%を尽くす」を体現した最終節のワンプレー
そして運命の5月15日、筆者のもとに記者仲間から2通のメッセージが届いた。
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Profile
中田 徹
メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。
