「もっと取れる、もっとできる」ベガルタ仙台ユース出身、ストライカー・古屋歩夢。誰よりも強く仲間を応援するルーキーの愛される力
【特集】百年構想リーグで台頭したU-21の新星#3
昇降格というプレッシャーから解放された百年構想リーグでは、勝敗だけでなく「成長」にも大きな価値が置かれる。若手にとって“試される場”であると同時に、“伸びるための舞台”でもある。本特集では、その環境の中で自らの才能をピッチ上で証明し始めたU-21の新星たちに光を当てる。
第3回はJ2・J3百年構想リーグ EAST-A の2月度「月間ベストゴール」「月間ヤングプレーヤー賞」をW受賞したベガルタ仙台の古屋歩夢。ユースから昇格してきたルーキーは、いきなり開幕戦でスタメンデビューを飾ると、鮮烈なプロ初ゴールを叩き出してみせる。一気に注目を集める存在となった新星は、果たしてどんな若者なのか。本人の言葉と周囲の人たちの声を合わせて、村林いづみがその横顔に迫る。
衝撃的な前評判「やばい奴がトップに上がります」
昨年の暮れのこと。ベガルタ仙台ユースを追いかけ続けるサポーターの一人がこんなことを話してくれた。「来年、やばい奴がトップに上がりますよ。古屋歩夢っていうんですけど、彼はとにかく点を取ります。どんな形でも取ります。ギラギラ感、半端ないです」
ベガルタ仙台における“若手ギラギラ枠”のFWでは、既に1年先輩の安野匠選手が在籍している。二人揃ってギラギラしてしまうのか……。これは森山佳郎監督、大変だ。でも楽しみだなと感じていた。
実際に話してみると、ギラギラというより、人懐っこい雰囲気が印象的だった。ピッチの中と外ではキャラクターが変わるのだろうか。仲間とのコミュニケーションでも、あえておどけて見せたり、あっという間に年上の選手の懐に入り込む器用さも感じた。ゴールを決めた先輩に駆け寄り、おんぶされてニコニコする古屋の姿がピッチ上にあった。

開幕先発の座を射止めたルーキー。「プレゼントする気はない」(森山監督)
「先発出場の座を、こちらからプレゼントするつもりはない」。百年構想リーグを「チャレンジ、成長のためのリーグ」と位置づける森山監督だが、だからといって、試合メンバーに特別な「若手チャレンジ枠」を設けるつもりはないと明言していた。そうした中で開幕戦となった栃木シティ戦では古屋とMF杉山耀建を即スタメンに抜擢し、周囲を驚かせた。それも「彼らがつかみ取ったもの」と説明した。
「古屋の場合は、宮崎(鴻)などFWチームにけがが多かった中で、練習試合で、連続で先発出場して、かなりいい仕事をしていた。そこで自分でつかみました。チャンスが転がってくるのも運だし、つかみ損ねる人もいる中で歩夢はしっかりつかんだ。そのチャンスをしっかりとプレーで表現してくれたと思います」

延岡・宮崎で行われたキャンプ中から“片鱗”は見えていた。古屋はゴールが見えたら、足を振る。とにかく振る。距離やその時の自身の体勢は関係ない。同期で共に仙台ユースから昇格したDF永井大義がこう教えてくれた。「ユースの時から、シュート本数がバケモンみたいに多いというか、ほとんどの試合で10本以上打っています。歩夢は打てば入るので、質より量なんだなと思いました」。
得点を量産し、仙台ユースのプレミアリーグ昇格に大きく貢献した古屋は「気づいたら取れていました」ととぼけるが、毎試合自分にプレッシャーをかけていたそうだ。「試合の前にみんなに『今日50点決めるわ』とか、ふざけたことばかり言っていました。それが自分の力になりました」。ふざけているようで、本人はふざけていない。絶対取れると信じているから、しゃにむに足を振り続けた。

プロデビュー戦のスーパーゴール。ピッチの中と外、二つの顔を持つ
そんなルーキーがプロとして迎えた2026年の百年構想リーグ開幕戦、第1節のアウェー・栃木シティ戦で先発に抜擢された。前半から果敢にゴールを狙い続けた。「(開幕戦)前半、決定機が3本あったのに決め切れず、バックラインの選手たち(菅田真啓、井上詩音)がセットプレーで取ってくれました。後半は何が何でも決めてやろうと思っていました」。ゴール前で、フリーでボールを受け、シュートまで持ち込んだが決めきれない。その度に先輩たちが「次決めろよ」「(ゴールは)近づいてるよ。続けろ!」と背中を叩き、励ましてくれた。
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Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。
