育成に興味がある人は必見!“U-12クラブW杯”全50試合から厳選したベストマッチ&有望株と戦術トレンド
サッカーを笑え #64
3月24日~29日、聖週間で学校が休みになるのを利用してU-12のクラブW杯(Mundial de Clubes Sub-12 LALIGA FC FUTURES/LALIGA FC FUTURES U12 Club World Cup)が開催された。と言ってもFIFA公認ではなくラ・リーガが主催するプライベートなものだが、スペインでは30年前から開催されている有名な大会で、1996年にはバルセロナのカンテラに加入する前のアンドレス・イニエスタがMVPとなっている。これまでは国内クラブ中心だったが、今回は11カ国の20チームが参加しW杯を名乗るにふさわしいものとなった(※全試合の再生リストは文末に)。
参加チームは以下の通り。
グループA:
パルメイラス(ブラジル)、フラメンゴ(ブラジル)、ボカ・ジュニオルス(アルゼンチン)、リーベル・プレート(アルゼンチン)、インテル・マイアミ(アメリカ)
グループB:
インテル(イタリア)、レバークーゼン(ドイツ)、パリ・サンジェルマン(フランス)、アーセナル(イングランド)、ガラタサライ(トルコ)
グループC:
レアル・マドリー(スペイン)、アトレティコ・マドリー(スペイン)、ベティス(スペイン)、セビージャ(スペイン)、ウィダードAC(モロッコ)
グループD:
バルセロナ(スペイン)、エスパニョール(スペイン)、バレンシア(スペイン)、ビジャレアル(スペイン)、上海海港(中国)
各グループから2チーム勝ち上がり、A対B、C対Dという組み合わせで決勝トーナメントを戦う。決勝にほぼ確実にスペインのチームが残るようになっているのは興行上の都合だろう。
子供たちは2014年生まれの11、12歳。フォーマットはスペインではこの年代に採用される7人制で、グラウンドの大きさは60メートル×40メートル、ゴールラインから12メートルのところにあるオフサイドライン内でのみオフサイドが適用される。試合時間は通常12分ハーフで、準決勝が15分ハーフ、決勝が20分ハーフ。決勝トーナメントでの延長戦はなく、3人のPK戦で決着をつける。
まず見るべき試合、我が身を振り返った戦術的ポイント
全日程、全試合が動画配信されているので見てみた。
試合数にして50試合(エキジビジョンマッチ2試合=スペイン代表対世界代表、レアル・マドリー対ボカ・ジュニオルスを含む)、時間にして30時間に及ぶ長丁場で、育成に興味がある人にはすべて見てほしいが、忙しい人のために戦術トレンド、注目試合、注目選手などをまとめた。
最初に、見るべき試合をピックアップしておきたい。これから見てくれることを前提に最小限の紹介に留めた(いくつかの試合については後半にネタバレ込みの補足説明があるので、まず見てから読んでください)。
■リーベル・プレート対パルメイラス
https://www.youtube.com/live/e57UALUCDB4?si=ZItr-dVzygcjx-LL&t=7712
今大会のベストマッチの一つ。まるで大人の試合のようだった。ハイレベルのテクニックとフィジカルを兼ね備えたチームがライバル心剥き出しでインテンシティの高いバトルを繰り広げた。あまりにエキサイトし過ぎてリーベル・プレートの監督が審判への猛抗議で大会唯一の退場処分を喰らい、子供たちの悪い見本となる。
■フラメンゴ対リーベル・プレート
https://www.youtube.com/live/lJ-38uTO2hE?si=NmS3N4LqSpw4cHVO&t=9653
同上。特に上のパルメイラス戦でも大活躍したリーベル・プレートの背番号⑦(アリエル・パス)を見てほしい。体のサイズを前面に出したプレーをする。体をぶつけながらボールを確保し前進する。シュートの正確さはテクニックの高さをうかがわせるが、「大きい子は伸びない」という定説(詳しくは後述)があるのも事実。あなたがスカウトならこの選手を獲得しますか?
■レアル・マドリー対ベティス
https://www.youtube.com/live/lJ-38uTO2hE?si=DFcyPJlVYx5vaIAw&t=11547
上のフラメンゴ対リーベル・プレートの次の試合なので続いて見ればよい。この試合ではどちらかのチーム(あえて名を秘す)の本当に素晴らしいパフォーマンスが見られる。フィジカル、テクニックに優れているのはもちろん、ポジションチェンジ、カバーリング、合理的なポジショニングの自由度が高いのに破綻しないのは戦術浸透度の高さゆえ。中でも崩すために必要なプレーを最適な効率性でやってのけるチームリーダーのプレーには誰もがうっとりとするはず。この試合での彼のパフォーマンスは他の試合と比べても抜きん出ている。見終わった瞬間に大会ベストチームだと思った。
■レアル・マドリー対アトレティコ・マドリー
https://www.youtube.com/live/fkkMAM6m27w?si=td3ceSzxLmIt-Pkg&t=7696
大量得点なら勝ち上がりの両チーム。やっぱり伝統は子供にも引き継がれているんだなぁ……。
■パルメイラス対パリ・サンジェルマン
https://www.youtube.com/watch?v=qtRWPm363ak(←このリンクの1試合目)
ネタバレするので解説は後述。
■フラメンゴ対パリ・サンジェルマン
https://www.youtube.com/watch?v=l5OqFk198fY(←このリンクの1試合目)
ネタバレするので解説は後述。
■バルセロナ対ベティス
https://www.youtube.com/live/l5OqFk198fY?si=CcafZxHKU71spz9l&t=2901
ネタバレするので解説は後述。
■バルセロナ対パリ・サンジェルマン
https://www.youtube.com/watch?v=fm8gMsZO05E(←このリンクの1試合目)
ただ見るべき。
■フラメンゴ対ベティス
https://www.youtube.com/live/fm8gMsZO05E?si=wrVGQP6Js_KrutH_&t=4358
ただ見るべき。
ここからネタバレ解説(結果について触れているので、試合を見てから読んでください)。
■パルメイラス対パリ・サンジェルマンについて
パリ・サンジェルマンは大会中に最も成長したチームだった。その成長ぶりは例えばインテル対パリ・サンジェルマン(https://www.youtube.com/watch?v=e57UALUCDB4 ←このリンクの1試合目)と比べればよくわかる。この大会用に複数のチームから選抜したチームだったので、当初はフィジカル任せの個人打開に頼っていたが、このパルメイラス戦ではコンビネーションも見られるようになり、いきなり優勝候補になった。特に、相手エースの背番号⑩を完封した背番号②(イサ・ザディ)には驚かされた。
■フラメンゴ対パリ・サンジェルマンについて
フラメンゴの大会ベストマッチ。子供にとって先制される精神的ショックは大きい。試合時間が短いとなると焦りはさらに増す。先に失点し強豪が力を出せずに敗退する姿を今大会は何度も見た。そんな中での逆転劇は見事。安全第一とフィジカル勝負でロングボールを多用するパリ・サンジェルマンに対し、フラメンゴは丁寧に繋いで相手を走らせ疲れを誘った“急がば回れ”が功を奏した。
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Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
