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PKキッカーはいかにGKの予測を上回るのか?「読まれる時代」最前線の攻防

2026.03.23

【特集】“もう一つのサッカー”PK戦の深層#3

90分で決着がつかなくても、試合は終わらない――2026年の百年構想リーグでJリーグは、リーグ戦としては異例のPK戦導入に踏み切った。W杯過去2大会で日本のベスト8を阻んだ壁。それがPK戦だった。Jリーグの日常に新たな景色が加わったこのタイミングで、“もう一つのサッカー”とも言えるPK戦の深層を多角的に考える。

第3回は、PKにおける「予測を上回る技術」に焦点を当てる。データによって“読まれる”時代で、キッカーはいかにしてその対策を打ち破るのか。視線、助走、コース選択、そしてメンタル――PKをめぐる攻防の最前線を読み解く。

「読まれるPK」の現在地

 ペナルティキック(PK)の成功率は75%~80%と言われている。確率論ではキッカーが有利なPKではあるが、GKと統計データの分析を担うデータアナリストは万全の準備を整え、相手のシュートを予測しようとしている。

 これまでのPKデータは徹底的に分析され、可視化された状態で得意なコースとしてGKに伝えられる。ゴールの脇に置かれた飲料ボトルにキッカーの得意な方向をメモしておくことで、キックの前に事前のデータを確認するような手段も一般的になりつつある。このように蹴る前から丸裸にされてしまうデータ分析に直面したキッカーには、今まで以上に駆け引きの技術が求められるようになっている。

 得意なコースに決めるためには「逆方向に蹴る」と相手GKに誤認させなければならず、逆に得意なコースを囮にしながらあえて苦手なコースに蹴ることもある。チェルシーやアーセナルで活躍したMFジョルジーニョのように独特の助走でタイミングを外して相手GKの飛んだ逆サイドにシュートを決める選手もいれば、ハリー・ケインのように助走やキック方向のパターンが豊富で正確なシュートを狙える選手もいる。

キッカーにとっての「自然なコース」とは何か

 PKキッカーにとって、ナチュラルサイド「自然な方向」とノン・ナチュラルサイド「不自然な方向」へのキックを調査した研究がある。

 カール・チュールス(Karl Tuyls)と共同研究者によって執筆した論文「ゲームプラン:AIがフットボールのために何ができるのか、そしてフットボールがAIのために何ができるのか」で、彼らは1万2399本のPKをAIを活用しながら分析した。

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Profile

結城 康平

1990年生まれ、宮崎県出身。ライターとして複数の媒体に記事を寄稿しつつ、サッカー観戦を面白くするためのアイディアを練りながら日々を過ごしている。好きなバンドは、エジンバラ出身のBlue Rose Code。

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