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今オフ、いわきFCが選手の契約期間を公にした理由。Jリーグの“隠し慣習”をぶち破る世界基準のマーケティング戦略とは?

2026.01.30

いわきグローイングストーリー第16回

Jリーグの新興クラブ、いわきFCの成長が目覚ましい。矜持とする“魂の息吹くフットボール”が選手やクラブを成長させ、情熱的に地域をも巻き込んでいくホットな今を、若きライター柿崎優成が体当たりで伝える。

第16回は、いわきが今オフ、選手の契約期間を公開した狙いやクラブのマーケティング戦略について迫る。

 激闘の1年を戦い抜き、シーズンオフに入ると次に待ち構えているのは選手やチームスタッフの契約更新発表のニュースだ。

 早いクラブは12月中旬から動き始め、大半のチームが12月末頃から本格化する。日々決まった時間に契約更新や選手の移籍に関するリリースが発表され、来季も我がチームでプレーする選手が一人一人判明する。

 例年であれば「xx年シーズンの契約を更新しました」という表現が主流だったが、Jリーグがシーズン移行期を迎える今冬は、クラブごとにリリース文の言葉のニュアンスが微妙に異なり、J1・J2全チームをリサーチしたところ大きく二手に分かれていた。

 一つは「百年構想リーグの契約を更新」、もう一つは「百年構想リーグ及び2026/27シーズンの契約を更新」という表現だ。クラブによって半年契約、あるいは1. 5年契約を結んだように見える表現を使っていた。その他、複数選手を一括で発表するケースが増え、シーズンを明文化しないクラブも存在した。実際には複数年契約結んでいる選手でもリリース上は単年契約のように見せている可能性もあり、契約交渉の内情はクラブと選手、代理人しか知り得ないクローズドな世界だ。

選手の契約期間に関わる“隠し慣習”を打破した背景

 様々な発表の仕方がある中、いわきFCは全く異なる表現を使っていた。契約更新と同時にリリース文中に選手の契約期間を公にしたのだ。

 「契約年数をここまで出すチームはあまりなかったと思います。公にすることで、反響があることは想定していましたし、ソーシャルメディアの反応は想定内でした」

 そう語るのは今回の仕掛け人であるいわきFC・栁澤凛氏(マーケティング&ファンエンゲージメント広報担当)だ。

 12月15日、順天堂大学に在籍する松本琉雅が2026/27シーズンより加入することが発表された。そのリリースの二文目には「なお、契約期間は2027年1月1日から2030年6月30日までとなります」と明記されていた。このリリースが契約年数を公にする第1号のリリースとなった。

 18日からは既存選手の契約更新のリリースがスタート。まず遠藤凌と山中惇希の契約更新を発表したが、彼らも同じように契約年数が明記された形式だった。

 いわきFCのように選手が他クラブに引き抜かれる可能性が高いチームにとって「xx選手はxx年シーズンまでいわきでプレーする」という安心感をサポーターに与える側面もある。もちろん、契約期間中であってもオファーが届き、選手が移籍を選択すればこの限りではない。生々しい話をすれば、契約期間中の移籍成立はクラブに移籍金収入が入ったことを意味する。

 栁澤氏はクラブスタッフとして働き始めたときから疑問を抱いていた。

 「実際は複数年で契約を結んでいる選手でも、シーズンオフになると契約更新のリリースが出される。世界に目を向けたときに何故なんだろうと思いました」

……

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Profile

柿崎 優成

1996年11月29日生まれ。サッカーの出会いは2005年ドイツW杯最終予選ホーム北朝鮮戦。試合終了間際に得点した大黒将志に目を奪われて当時大阪在住だったことからガンバ大阪のサポーターになる。2022年からサッカー専門新聞エル・ゴラッソいわきFCの番記者になって未来の名プレーヤーの成長を見届けている。

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