緑のじゅうたんの守り人、オフィスショウの“チーム・ベガルタ仙台”が取り組んだ、ユアテックスタジアム仙台とTGベガルタ仙台フィールドの1年
ベガルタ・ピッチサイドリポート第33回
J1昇格を目指し戦い続けるベガルタ仙台。そんなクラブを足元から支える力強い存在が仙台にはいる。本拠地・ユアテックスタジアム仙台と2025年から運用が始まった新練習場・TGベガルタ仙台フィールドの芝生を管理する「オフィスショウ」のチーム・ベガルタ仙台だ。選手たちがプレーするピッチを育むべく心血を注いだ渕圭介さんと佐々木和之さん。二人のグラウンドキーパーに、彼らが歩んだ激闘の2025年について聞いた。
アルティメット経験者の渕さんと元GKの佐々木さんのタッグ
――いつも練習場や試合会場でお会いしますが、改めてお二人のプロフィールを伺ってもよろしいですか?
渕「僕は大阪出身です。滋賀の大学に通って、新卒でオフィスショウには2009年に入社し、今は16年目ぐらいですね。最初は味の素スタジアムの助手に入って、そこからヴァンフォーレ甲府の練習場を約8年間担当しました。
次は東京に戻って、駒沢オリンピック公園の陸上競技場。高校サッカーでメイン会場として使ってたところを7、8年やって、仙台にたどり着きました。2024年、オフィスショウの社内選考で『仙台は誰にしようか』ということになり、お話を頂きました。最終的には2025年の1月末、2月くらいに決定しました」
佐々木「僕は秋田出身です。オフィスショウへ2020年に入社して、最初は福島のJヴィレッジの方におりました。その後、いわきFCさんのホームのハワイアンズスタジアムいわき(当時はいわきグリーンフィールド)。いわきFCさんがJ2に昇格したので、そこの改修工事から仕事させていただきました。
そして2024年にTGベガルタ仙台フィールドの造成時から携わらせていただきました。去年は通いながら芝生の方を見ていて、2025年3月から仙台で仕事させていただいてます」
――佐々木さんはいわきから通っていたんですか?
佐々木「僕が住んでいたのはいわき市の近くの広野町というところだったんですけど、そこから通っていました。工事から関わり、6月にポットの苗を皆さんに集まってもらって植えて、管理に通っていました。3月に引っ越してきて今まで管理させていただいています」
――お二人でスタジアムと練習場を管理されていますが、担当の棲み分けはあるのでしょうか?
渕「基本的には僕がユアスタ担当で、彼が練習場担当。僕が仙台の責任者としてやらせてもらっていて、ユアスタと練習場を見ていますが、練習場は佐々木に任せているというスタンスです」

――お二人が所属する「オフィスショウ」は国立競技場など日本の名だたるスタジアムの管理を任されてきました。競技用の芝を管理する上で日本ではパイオニア的存在。かなり大きな組織ですよね。全国で担当しているスタジアム、競技場は30か所以上ですか?
渕「そうですね。今、人数的には40人前後位のグラウンドクルーがいます。本当にありがたいことに、毎年いろんなお話をいただいて、ベガルタ仙台さんもそうですし、現場は徐々に増えていってますね」
――お二人はなぜオフィスショウに入社しようと思ったのですか?
渕「僕はびわこ成蹊スポーツ大学に通っていました。当時できたばかりの大学で3期生でした。大学に天然芝のグラウンドがあったんですけど、たった2年で芝がボロボロになってしまった。スポーツ大学なのに……と、そこに違和感があったんです。
日本のトップアスリートを輩出していこうとか、そういう施設をサポートしていこうという大学の環境で、どうして芝が2年でダメになるんだろうっていうところに疑問を抱きました。それから、スポーツの施設や海外の事例などで、『どうやったらトップアスリートが毎日パフォーマンスを続けても、天然芝を良い状況で保つことができるのか』というところから芝生に興味を持ちました」
――そういうことを学ぶ学科だったのですか?
渕「生涯教育のスポーツ学科でした。競技という部分ではなくて、スポーツ施設や地域スポーツクラブ、学校などの場の関わるところです。教員免許を取って、自分が教員になった時に子どもたちに天然芝でスポーツをやってもらいたいという思いがありました。でも芝生について調べていくうちに、すごく奥深くて、教員免許は取ったけれど、芝生の方に興味が湧いちゃって……。
学校の校庭緑化に取り組んでいる方が鳥取にいて、その方とうちの代表の池田(省治)が知り合いで、オフィスショウには紹介してもらって入ったという経緯です。僕がオフィスショウに入った16、7年前は全国的に校庭緑化のブームがあった頃なんです」
――確かにニュースでも盛んに取り上げられていた頃でしたね。ちなみに渕さんは何かスポーツには取り組んでいたのですか?
渕「大学時代はアルティメットというフリスビー競技をやっていました。僕は小学校でサッカー、中学高校でバレーボールをやっていました。大学では違うスポーツやりたいなって。そこで初めて天然芝での屋外のスポーツをやったんですよ。日本はクレーコートなのに、海外、アメリカなどは天然芝でやるんです」
――なかなかない経歴の持ち主ですね。そして、そこも芝とつながっていると。佐々木さんはどのような経緯でオフィスショウに入ったのですか?
佐々木「僕は仙台大学に通っていました。大学までずっとサッカーをやっていました。大学が天然芝のグラウンドを持っていたんですが、サッカーを辞めた時に芝の管理のアルバイトの話があって。その時、何もしなくて、卒業後も何しようかなと考えていた時期があったんです。学校では芝生の授業もありましたし、興味を持っていました」
――仙台大学では芝生の授業があるんですか?
佐々木「はい。その授業を受けて、そこからのつながりでアルバイトもやらせてもらって。そこの担当の方が、代表の池田と知り合いというご縁で紹介してもらい、オフィスショウに入らせていただきました」

――日本で芝のことになると、必ず「オフィスショウの池田省治さん」につながっていくという話もあります。
渕「そうですね。池田は日本においてこの業界のパイオニアだと思います。普段の僕たちの仕事は、日本ではあんまりフィーチャーされない。グラウンドキーパーの地位を確立させることをうちの池田は目指しています」
――海外では事情は異なりますか?
渕「海外では選手がどういう環境でプレーするかということは一番大事にされているので、グラウンドにやっぱり労力をかけます。アメリカとかヨーロッパでは、グラウンドキーパーという職業の地位は確立されていて、試合の時もその意見がより尊重されています」
グラウンドキーパーに大事なのは笑顔!?師匠の教えで全国の芝を守り抜く
――芝生を育て管理していく上で、オフィスショウとして一貫したメソッドというものがあるのでしょうか?
渕「具体的な工法などは、いろんな会社によってそれぞれのやり方があるんですけど、池田が一番大事にしてるのは工法とか、そういうことではないんです。もう笑顔ですよ。『グラウンドキーパーは笑顔が大事だ。もうそれが究極だから』と。僕らは仕事をしていく上で、常に悔しいこともありますけど、とりあえず笑顔で!っていうのが、本当に池田が教えてくれたことなんです」
――意外な答えが返ってきました。確かに、渕さんもそうですし、佐々木さんもいつも練習場で、笑顔であいさつをしてくれています。
渕「そうなんですよ。練習場では特に選手やスタッフと距離が近くなる。笑顔でいると、上手くいじってもらえたりもするんです」

――どんな声をかけてもらったりしますか?
佐々木「そんなに僕の方から話しかけたりすることは多くないですが、『芝、どう?』と聞いてもらったりしますね」
渕「(利用が始まった3月の)最初の練習の日に、郷家友太選手が、僕らのいるところに近寄ってきてくれて、『何でここの芝はめくれないんですか?』って聞いてくれて衝撃だったんです。
でもやっぱり練習場で、僕らが今までやってきたやり方、芝の品種もそうですけど、それまでと変えてやってみると毎日の練習強度にも耐えられるようになりました。選手からも、このTGベガルタ仙台フィールドの環境は好評だと聞くことができたし、佐々木にもその声は届いていました」
――2025年3月からベガルタ仙台の練習場として運用が始まったTGベガルタ仙台フィールドでの1年はどのようなシーズンでしたか?
……
Profile
村林 いづみ
フリーアナウンサー、ライター。2007年よりスカパー!やDAZNでベガルタ仙台を中心に試合中継のピッチリポーターを務める。ベガルタ仙台の節目にはだいたいピッチサイドで涙ぐみ、祝杯と勝利のヒーローインタビューを何よりも楽しみに生きる。かつてスカパー!で好評を博した「ベガッ太さんとの夫婦漫才」をどこかで復活させたいと画策している。
