プレミア前半戦の「完璧な予想外」!昇格組サンダーランドの“トップ6クリスマス”はなぜ実現できたのか
Good Times Bad Times 〜フットボール春秋〜 #24
プレミアリーグから下部の下部まで、老いも若きも、人間も犬もひっくるめて。フットボールが身近な「母国」イングランドらしい風景を、在住も25年を超えた西ロンドンから山中忍が綴る。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第24回(通算258回)は、今季プレミアリーグの歓迎すべきサプライズ、前半戦で最も印象的だったサンダーランドの快進撃について。
9年ぶりのプレミアで強豪からポイント連取、宿敵を撃破!
本稿を書いているのは、クリスマスの翌日。英国の12月26日は、ボクシング・デーと呼ばれる祝日だ。2025年は金曜日だったのだが、近所の広場でも週1で開催されるキッズ・サッカーの対抗戦は行われておらず、少人数で練習をするチームがある程度。人通りの少なさを幸いに、リスが挙(こぞ)って木の下に降りてきていた。
灰色で腹部が白いリス(米国原産のトウブハイイロリス)が、本格的な冬に備え、忙しく木の実を食べたり、蓄えたりする光景は、秋口からよく目にする。2025-26シーズン前半戦は、食物を地面に埋めて、キュッキュッと手で押して隠しているリスを見かけると、プレミアリーグ復帰1年目にポイントを重ねる、サンダーランドの様子とイメージが重なった。

近年のプレミアでは、サバイバルが第一目標の昇格組にとって、言わば真冬の厳しさが続いている。昨季は、2年連続で3クラブがそろって2部に逆戻り。しかも、サンダーランドはプレーオフ(3〜6位)経由での昇格だ。昨季2部での順位は、リーズとバーンリーのトップ2と24ポイント差の4位。5連敗でリーグ戦日程を終えると、コベントリーとのプレーオフ準決勝第2レグでは延長戦の終了間際、シェフィールド・ユナイテッドとの決勝ではフルタイム目前のゴールで、辛くも9年ぶりのプレミア復帰に漕ぎ着けたのだった。
今季の好発進が話題になり始めたのは、序盤戦の10月。サンダーランドは、リーグ戦開幕8試合を2敗のみで終えていた。ただし、強豪戦や上位戦が少なく、対戦カードに恵まれてもいた。その後は格上との対戦が増え、イングランド北東部の宿敵ニューカッスルとのダービーも訪れ、主力の離脱を意味するアフリカ・ネーションズカップ開幕へと続く前半戦。総合戦力に反映される選手年俸総額は20チーム中最低、平均年齢は最年少2番手というチームは、獲れる時にできる限りポイントを貯め込むしかないと思われた。
とはいえ、クリスマスまでのリーグ戦17試合で獲得した勝ち点は、昇格組にすれば「貯めも貯めたり」と言える27ポイント。同時期に同数のポイント数を稼いでおきながら、プレミアを去る羽目になった前例は存在しない。第9節以降の対ビッグクラブ戦も、チェルシーには敵地で勝ち(1-2)、ホームでのアーセナル戦(2-2)とアンフィールドでのリバプール戦(1-1)でも勝ち点1を奪う健闘ぶり。ほぼ10年ぶりに実現したプレミアでのタインウィアダービーでは、敵のオウンゴールが唯一の得点ながら、スタジアム・オブ・ライトでのニューカッスル戦勝利(1-0)をホーム観衆と喜び合っている。結果、残留争いではなく、欧州出場権争いの一員と目されながら、リーグ6位でクリスマスを迎えることになった。
3部降格から7年、ル・ブリ監督の下で打たれ強いチームに
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Profile
山中 忍
1966年生まれ。青山学院大学卒。90年代からの西ロンドンが人生で最も長い定住の地。地元クラブのチェルシーをはじめ、イングランドのサッカー界を舞台に執筆・翻訳・通訳に勤しむ。著書に『勝ち続ける男 モウリーニョ』、訳書に『夢と失望のスリー・ライオンズ』『ペップ・シティ』『バルサ・コンプレックス』など。英国「スポーツ記者協会」及び「フットボールライター協会」会員。
