ヤマル&ニコ不在でも31戦無敗!1対1突破もロングボールもないスペイン代表“プランC”の崩し
サッカーを笑え #55
スペイン代表がW杯進出を決めた。欧州予選6試合で5勝1分・21得点2失点と圧倒的な成績だった。これで31試合負け知らずとなりビセンテ・デル・ボスケ時代の29試合を超えたが、あちらはW杯で優勝しているので、ルイス・デ・ラ・フエンテが歴代最高の名監督となるか否かは来夏の成績次第となる。
ただ、国内の空気は冷たい。11月18日の予選最終節トルコ戦の観客はたった3万人、7万人収容のラ・カルトゥハ(セビージャ)スタジアムはガラガラだった。平日夜の試合で、チケットは最低でも34ユーロ(約6000円)で、アクセスの非常に悪いスタジアムで、7点差以上で敗れない限りW杯出場が決定という状況では、魅力があまりになさ過ぎた。スペインサッカー連盟はこういう時こそ大幅ディスカウントでファンに還元すべきだった。中継した国営放送のW杯で優勝したかのような“大本営発表”ぶりと比べると、ファンの冷静さが頼もしかった。まだ予選である。“無敵艦隊”と大騒ぎしスカを喰らわされ続けた経験は我われの心に生き続けている。
2010年に世界一になってファンの態度は明らかに変わった。別にもう世界一を目指さなくてもいい、という余裕が生まれた。個人的には「ラミン・ヤマルがいる限り、俺が生きている間にもう1回世界一になれるかもしれないな」くらいな感じ。欧州で続く2つの戦争、馬鹿みたいなインフレ、移民との共存と軋轢、社会の分断、南スペインの灼熱化……心配すべきことはたくさんある。あの試合をテレビで見ればいいか、というのには賛成で、当日セビージャにたまたま居た自分もそうした。
試合内容もそれなりだった。デ・ラ・フエンテ監督は大幅にメンバーを入れ替え予選での連勝と無失点記録は途切れた。トルコに押されての2‐2という結果はまあそんなものか。あとは12月5日の抽選で日本と同組になることを祈るばかりだ。
「足下」だけで2つのキーゾーンから3つのアクションで攻略
予選での典型的なイレブンはこんな感じ。
■各大会の典型的なイレブン
W杯予選突破(2025年11月)
5勝1分・21得点2失点
[4‐2‐3‐1]([4‐3‐3])
オヤルサバル
バエナ メリーノ フェラン
(ペドリ)
ペドリ スビメンディ
(ファビアン)
ククレジャ ラポルト クバルシ ポロ
(ハイセン)(ル・ノルマン)
ウナイ・シモン
ネーションズリーグ準優勝(2025年6月)
5勝2分1敗・25得点15失点
[4‐2‐3‐1]([4‐3‐3])
オヤルサバル
ニコ ペドリ ヤマル
(オルモ)
ファビアン スビメンディ
(メリーノ)
ククレジャ ハイセン ル・ノルマン ポロ
ウナイ・シモン
EURO2024優勝(2024年7月)
7勝0分0敗・15得点7失点
[4‐2‐3‐1]([4‐3‐3])
モラタ
ニコ オルモ ヤマル
ファビアン ロドリ
ククレジャ ラポルト ル・ノルマン カルバハル
ウナイ・シモン
……
Profile
木村 浩嗣
編集者を経て94年にスペインへ。98年、99年と同国サッカー連盟の監督ライセンスを取得し少年チームを指導。06年の創刊時から務めた『footballista』編集長を15年7月に辞し、フリーに。17年にユース指導を休止する一方、映画関連の執筆に進出。グアルディオラ、イエロ、リージョ、パコ・へメス、ブトラゲーニョ、メンディリバル、セティエン、アベラルド、マルセリーノ、モンチ、エウセビオら一家言ある人へインタビュー経験多数。
