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プレミア勢がそろうオランダ代表。「ホーラント・スホール2.0」の完成は北中米W杯に間に合うか?

2025.10.25

VIER-DRIE-DRIE~現場で感じるオランダサッカー~#21

エールディビジの3強から中小クラブに下部リーグ、育成年代、さらには“オランイェ”まで。どんな試合でも楽しむ現地ファンの姿に感銘を受け、25年以上にわたって精力的に取材を続ける現場から中田徹氏がオランダサッカーの旬をお届けする。

第21回で取り上げるのは、北中米のダークホースとして期待を背負っているオランダ代表について。プレミアリーグの実力者がそろう中で、「ホーラント・スホール2.0」は完成するのか?

 読者のみなさんに1つ、お詫びしたいことがある。昨年9月の国際マッチウィークで、オランダ代表の若き2人のストライカーが活躍したことから「長年不在だった“世界に通用する真のストライカー”候補として、ジルクゼーとブロビーが名乗りを挙げたのは頼もしい」と記した。しかしその後、ジョシュア・ジルクゼー(24歳/マンチェスター・ユナイテッド)、ブライアン・ブロビー(23歳/サンダーランド)はともにブレイクすることなく、今季は所属先でノーゴールのまま。今はオランダ代表のメンバーから漏れている。来年に迫る北中米W杯を見据えると、これは厳しい。

 メックス・メールディンク(22歳/AZ)、エマニュエル・エメガ(22歳/ストラスブール→来夏のチェルシー加入内定)という逸材はいるものの、オランイェの即戦力としてはまだ心もとない。今はメンフィス・デパイ(31歳/コリンチャンス)、ワウト・ウェフホルスト(33歳/アヤックス)のベテランコンビに頼らざるを得ないのが、かつてのストライカー王国の現状だ。

 このようにFW陣に一抹の不安を覚えるオランダだが、「2026年W杯ではダークホースながら、世界一を狙うことができるのでは?」という期待を背負っている。それというのもストライカーと、ドニエル・マーレンが10月に評価を高めた右ウイングを除けば、かなり高いレベルの選手がそろっているからだ。そのインデックスとなるのが世界最高峰、プレミアリーグのクラブでプレーするオランダ人の数。昨季は22人だったのが、今季は一気に36人まで増えた。しかも、その多くがレギュラーとして活躍している。

 10月12日、ヨハン・クライフ・アレーナにフィンランド代表を迎え撃ったオランダは、次のようなメンバーで戦った(★=プレミアリーグのクラブ所属選手)。

GK:★バルト・フェルブルッヘン(ブライトン)

DF:デンゼル・ドゥムフリース(インテル)、★ユリエン・ティンバー(アーセナル)、★フィルジル・ファン・ダイク(リバプール)、★ミッキー・ファン・デ・フェン(トッテナム)

MF:★ライアン・フラーフェンベルフ(リバプール)、フレンキー・デ・ヨング(バルセロナ)、★ユースティン・クライファート(ボーンマス)

FW:★マーレン(アストンビラ)、デパイ(コリンチャンス)、★コーディ・ガクポ(リバプール)

 実に先発11人のうち、8人がイングランドで活躍するスターたちだったのだ。残る3人もイタリア、スペイン、ブラジルのビッグクラブの主力だ。ちなみに、同試合で途中出場したのは下記5人。うちプレミア勢は4人だった。

DF:★ヤン・ポール・ファン・ヘッケ(ブライトン)、★ナタン・アケ(マンチェスター・シティ)

MF:★ティジャニ・ラインダース(マンチェスター・シティ)、★チャビ・シモンス(トッテナム)

FW:ウェフホルスト(アヤックス)

「ホーラント・スホール2.0」を象徴するフラーフェンベルフ

 2014年秋から3年。代表チーム、クラブチームの暗黒期を迎えたオランダサッカー界は、18-19シーズン、オランダ代表がネーションズリーグで準優勝し、アヤックスがCLでベスト4に進出した頃から復活。強国・強敵相手にフィジカル負けしないサッカーをするようになった。

……

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Profile

中田 徹

メキシコW杯のブラジル対フランスを超える試合を見たい、ボンボネーラの興奮を超える現場へ行きたい……。その気持ちが観戦、取材のモチベーション。どんな試合でも楽しそうにサッカーを見るオランダ人の姿に啓発され、中小クラブの取材にも力を注いでいる。

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