REGULAR

進化したデ・ゼルビのマルセイユ。「疑似カウンター」+「対強豪用ローブロック」の二面作戦

2025.09.24

新・戦術リストランテ VOL.85

footballista創刊時から続く名物連載がWEBへ移籍。マエストロ・西部謙司が、国内外の注目チームの戦術的な隠し味、ビッグマッチの駆け引きを味わい尽くす試合解説をわかりやすくお届け!

第85回は、デ・ゼルビ監督就任2年目のマルセイユ。自陣でのポゼッションで相手を誘引して裏を突く「疑似カウンター」が代名詞だが、それにプラスして対強豪用のローブロック戦術を用意。昨季CL王者のPSGを撃破したように、格上相手にも戦えるチームに仕上がってきているのが興味深い。

CL王者のPSGを撃破

 デ・ゼルビ監督の2年目、国内リーグは3勝2敗で6位、CLリーグフェーズの初戦はレアル・マドリーに1-2で敗れています。

 好調なスタートとは言えませんが、内容的には調子を上げてきています。何といっても第5節の“ル・クラスィック”、パリSG戦に勝利したのは大きいと思います。

 ホームのベロドロームでの一戦は開始5分でアゲルドが先制。そこからは[5-4-1]のローブロックでPSGを完封しています。

 この試合は天候の問題で1日延期されていまして、バロンドール授与式と重なっていました。受賞に輝いたデンベレはもともと負傷中で同じく出席していたドゥエ、バルコラも戦線離脱していたため、不在というのはPSGにとって痛手でしたね。

 デ・ゼルビ監督下のマルセイユについては昨季序盤にも取り上げました。戦術は独特ですが、昨季と大きな違いはありません。ただ、ローブロックの強度は増していて、ここが違いですね。

 選手もかなり入れ替わっています。PSG戦ではパバール、アゲルド、ウェア、オライリー、パイソン、エメルソンが新加入。他にもレギュラークラスではゴメス、オーバメヤン、メディーナが新加入ですね。戦術が独特なのに、こんなに選手が代わってしまって大丈夫なのかと思いますが、そんなに影響がないのもデ・ゼルビ監督のチームっぽいです。

相変わらず独特な「SBのMF化による可変」

 メンバー紹介的には[4-2-3-1]になっていますが、毎回そうではありません。というより攻守で可変します。可変の仕方がわりと独特で、デ・ゼルビらしさでもあります。

 ビルドアップは3枚回しです。攻撃システムは[3-4-3]という理解でいいと思います。

 基本的には3バック、MFはダイヤモンド型の4人、3トップ。ただ、試合の性質によって違うこともあり、その点は後述します。

……

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Profile

西部 謙司

1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。

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