全4チームが16強入り。ブラジル勢はなぜクラブW杯で躍進できたのか
サウダージの国からボア・ノイチ 〜芸術フットボールと現実の狭間で〜 #18
創造性豊かで美しいブラジルのフットボールに魅せられ、サンパウロへ渡って30年余り。多くの試合を観戦し、選手、監督にインタビューしてきた沢田啓明が、「王国」の今を伝える。
footballista誌から続くWEB月刊連載の第18回(通算196回)は、ベスト4進出のフルミネンセを筆頭にクラブワールドカップ2025を大いに盛り上げたブラジル勢、その快進撃の背景には何が?
最も期待されていなかったフルミネンセが4強へ
クラブW杯でブラジル勢が健闘した。出場した4チームすべてがグループステージを突破し、フルミネンセとパルメイラスが準々決勝へ、そしてフルミネンセが準決勝へ――。大方の国内メディアの予想を上回る結果を残した。
大会前、ブラジルで最も期待度が高かったのはパルメイラスとフラメンゴだった。ともに国内ではトップクラスの財力があり、今年のブラジル全国リーグでも好調。ボタフォゴも、財政難による一時の低迷を脱し、昨年コパ・リベルタドーレスと全国リーグをダブル制覇した。
評価が最も低かったのが、フルミネンセ。2023年のコパ・リベルタドーレス覇者だが、昨年は不振に喘いだ。全国リーグで下位に低迷し、最終節で勝ってかろうじて降格を免れた。
今年も、全国リーグの開幕戦で敗れて監督を更迭。クラブOBのレナート・ガウーショを後任に据えたが、クラブW杯前の時点で6位。攻守両面で力不足と思われていた。
実際に、グループステージにおける試合内容はいま一つ。初戦は試合開始が正午で、暑さを味方につけてドルトムントと引き分けた(0-0)。続く蔚山HD戦では、先制したものの前半のうちに逆転を許し、後半3点を奪って逆転勝ち(4-2)。ただし、この試合で守備の柱である主将チアゴ・シウバが故障し、マメロディ・サンダウンズ戦を欠場することに。しかし、チアゴ・シウバの代役を務めたイギナシオら守備陣が奮闘し、引き分けて(0-0)グループFを2位で突破した。
ラウンド16のインテル戦では、相手の強力攻撃陣への対策として、復帰したチアゴ・シウバにイギナシオを加えた3バックで臨んだ。試合開始直後に先制し、後半アディショナルタイムに途中出場のMFエルクレスがミドルシュートを決めて快勝した(0-2)。
準々決勝では、ラウンド16でマンチェスター・シティを延長戦の末に3-4で下したアル・ヒラルと対戦。前半のうちに先制し、後半早々に追いつかれたが、エルクレスがまたしてもミドルシュートを突き刺して勝ち切った(2-1)。
しかし、準決勝ではチェルシーに中盤を支配された。18分、ブライトンから加入したばかりのブラジル代表CFジョアン・ペドロにミドルシュートを決められて先制を許す。その後、チャンスを作ったが生かせず、56分にはまたしてもジョアン・ペドロに強烈なシュートを叩き込まれて敗退した(0-2)。
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。
