
「ポジション」史#3 ストライカー編
ストライカーには2つの系譜がある。“ブンダーチーム”と言われたオーストリア代表のエースだったシンデラーに始まり、“マジック・マジャール”のCFヒデクチ、トータルフットボールのクライフ、そしてメッシへと連なる「偽9番」の系譜。もう1つが“ディキシー”・ディーンに代表される長身頑健な重戦車の系譜。ゲルト・ミュラー、ロマーリオ、ファン・バステンといったエリア内の異能者たちだ。この2つの流れが組み合わさり、時代に合わせてそれぞれ形を変えながら継承されてきた、というのが西部氏の解釈だ。
アーサー・フィッツジェラルド・キンナード卿――フットボール黎明期のスーパースターである。「スター」という表現はふさわしくないかもしれない。なにせ「卿」なのだ。
スコットランド貴族でイートン校の出身、ケンブリッジ大学卒。上院議員、1890年からはFA会長もやっていた。
「すべての心正しき人は、この大衆的な国技の発展について、神に感謝を捧げる十分な理由を持っている」
フットボール万歳、と言っているわけだ。ある日、チームメイトがキンナード卿の邸宅を訪れた時、夫人が「夫が骨折するのではないか」と心配していた。訪問客はこう答えたという。……
残り:4,898文字/全文:5,418文字
この記事の続きはプレミア会員
のみお読みいただけます
プレミア会員3つの特典
-
会員限定のオリジナル
記事が読み放題! -
電子版バックナンバーが
読み放題! -
雑誌最新号を毎月
ご自宅にお届け
TAG

Profile
西部 謙司
1962年9月27日、東京都生まれ。早稲田大学教育学部卒業後、会社員を経て、学研『ストライカー』の編集部勤務。95~98年にフランスのパリに住み、欧州サッカーを取材。02年にフリーランスとなる。『戦術リストランテV サッカーの解釈を変える最先端の戦術用語』(小社刊)が発売中。
関連記事
2020.08.08
収め、流れ、飛び出し、フィニッシュまで。攻撃のあらゆる局面にレバンドフスキあり
2020.08.07
アグエロ、ジェズスは戦術とマッチするも… シティの“クロスの上げ手”問題
2020.08.07
ゲームモデルなきレアル・マドリーの攻撃を司る「戦術ベンゼマ」
2020.08.02
齢を重ねてもイブラはイブラ。 実質トップ下として攻撃の基準点に
2020.08.01
非トレンドのカウンター志向とスペースが必要なインモービレとの幸福な関係
RANKING
Information
フットボリスタ第98号
2023.08.09
蹴球ヒストリア 「サッカーに魅入られた同志たち」の幸せな来歴
2023.06.11
モダンサッカー3.0「ポジショナルプレー」から「ファンクショナルプレー」へ
2023.06.11
関連記事
2020.08.08
収め、流れ、飛び出し、フィニッシュまで。攻撃のあらゆる局面にレバンドフスキあり
2020.08.07
アグエロ、ジェズスは戦術とマッチするも… シティの“クロスの上げ手”問題
2020.08.07
ゲームモデルなきレアル・マドリーの攻撃を司る「戦術ベンゼマ」
2020.08.02
齢を重ねてもイブラはイブラ。 実質トップ下として攻撃の基準点に
2020.08.01