近年のサッカーの進化、ストライカーに求められる仕事の増加に伴い、いわゆる生粋の点取り屋のような選手はめっきり減少した。こうした事情は、多彩なスキルやイマジネーションにあふれたプレーで違いを生み出してきた南米、ブラジルのストライカー育成にも影響を与えているのだろうか。王国の中でも「最も優れたストライカーを輩出してきた」サントスFCを、現地在住の沢田啓明さんが直撃取材し育成事情に迫った。
ブラジル出身のストライカーといえば、誰もがすぐに思い浮かべるのがロマーリオとロナウドだろう。ロマーリオは小柄にして敏捷で、マーカーとの駆け引きに長け、状況によって最適のシュートを放つ技術とスキルを備えていた。ロナウドは大柄でパワフルだが、スピードとテクニックも十分に持ち合わせていた。2人の体格は対照的ながら、ゴールへの嗅覚と勝負強さは共通していた。
しかしその後、ブラジルからこの2人に匹敵するレベルのストライカーは出現していないように思える。「アタッカー」という括りなら、リバウド、カカー、ロナウジーニョ、ネイマールらがいる。だが、彼らには根っからの点取り屋というイメージはない。
なぜブラジルからロマーリオ、ロナウドのような“怪物”クラスのストライカーが出現したのか、そして以降なぜ出てこないのか。あるいは、ブラジルのストライカー育成の方法やコンセプトが変化したのか――。
下部組織の競争はトップチーム以上
過去、ブラジルで最も優れたアタッカーを輩出してきたのがサントスFCである。古くはペレ、コウチーニョ、ペペ、近年ではFWロビーニョ(現バシャクシェヒル)、MFジエゴ(現フラメンゴ)、FWネイマール(現パリ・サンジェルマン)、FWガビゴウ(現フラメンゴ)、FWロドリゴ(現レアル・マドリー)ら錚々たる逸材を世に送り出している。

サントスは人口約43万人の港町に本拠を置き、ホームスタジアムの収容人数は1万6000人程度。ファンの数はフラメンゴ、コリンチャンス、パルメイラスといった大都会のクラブに到底及ばず、年間予算はその半分に満たない。練習施設も国内トップクラスではない。にもかかわらず、なぜこれほど多くの優れたアタッカーが育ち、今なお輩出し続けているのか?
サントスの下部組織責任者、マルコ・アントニオ・マトゥラナ氏の説明はこうだ。
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Profile
沢田 啓明
1986年ワールドカップ・メキシコ大会を現地でフル観戦し、人生観が変わる。ブラジルのフットボールに魅せられて1986年末にサンパウロへ渡り、以来、ブラジルと南米のフットボールを見続けている。著書に『マラカナンの悲劇』(新潮社)、『情熱のブラジルサッカー』(平凡社新書)など。
