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“闘将”や“ワンマンリーダー”は消えてゆく!? 英国キャプテンシー論争

2020.06.19

 昨年11月、英国ではアーセナルのキャプテン交代劇をきっかけに“キャプテンシー論争”が巻き起こった。選手間投票で主将に選ばれたMFグラニト・ジャカが、ファンの大ブーイングに対して暴言を吐き捨てて腕章を剥奪されたのだ。これを受けて、英国ラジオ局『talk SPORT』では「キャプテンの美学」という特集が組まれた。

3種類のキャプテンと真のリーダー

 そもそも「キャプテン」とは何者なのか? 元アーセナルのマーティン・キーオンは「まず何より選手として際立っていること」と番組に語る。クラブ史上最年少の22歳で主将を任されたトニー・アダムズを間近で見てきた彼は、キャプテンとは「監督と選手のパイプ役であり、ピッチ外でも尊敬できる者」と表現した。マンチェスター・ユナイテッドでキャプテンを務めたギャリー・ネビルは「労働倫理」を挙げる。「ロイ・キーンやエリック・カントナのような実績十分のリーダーが必死にプレーしていたら、20歳の若手は見習う他ない」。

マーティン・キーオンとトニー・アダムス

 キャプテン像は見えてくるが、これを定義付けするには学説が必要になる。スポーツ心理学によればキャプテンは3種類に分けられると、その分野の権威であるギャリー・ブルームは説く。うまく自分の仕事をこなす「タスク・キャプテン」、士気を高める「モチベーショナル・キャプテン」、そして社交性で集団をまとめる「エクスターナル・キャプテン」だ。実は、この3つの役割を1人でこなすキャプテンは皆無に等しいと番組内で説明する。様々なスポーツを対象にベルギーで行われた調査の結果、“3役”ともこなすキャプテンは2%しかいなかったそうだ。……

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キャプテンリーダー

Profile

田島 大

埼玉県出身。学生時代を英国で過ごし、ロンドン大学(University College London)理学部を卒業。帰国後はスポーツとメディアの架け橋を担うフットメディア社で日頃から欧州サッカーを扱う仕事に従事し、イングランドに関する記事の翻訳・原稿執筆をしている。ちなみに遅咲きの愛犬家。

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